デスストランディング(感想 愛でるノーマンときどきマッツ)

まず思った感想は題名のとおり。ノーマンとマッツ好きのそれぞれのファンの方が遊んだら、舐め回すような2人の映像に、興奮して発狂すると思う。

【PS4】DEATH STRANDING

【PS4】DEATH STRANDING

 

 

日本から生まれた天才ゲームクリエイター小島秀夫の新作ゲーム。本人はかなりのシネフィルとしても有名。

 

文春オンライン小島秀夫

 

前作メタルギアソリッド5では主人公の英語版声優がキーファーサザーランドだったが、今回のデスストランディングはさらに豪華。

声だけでなく、ついに実在の俳優そのものがフルCGとなって登場。出演は、処刑人やウォーキングデッドのノーマンリーダス、007カジノロワイヤルでボンドに金的攻撃した北欧の至宝・マッツミケルセン、同じくボンドガールを演じたりルイヴィトンの広告でもよく見るレアセドゥ、ワンスアポンアタイムインハリウッドにも出演したマーガレットクァリー、シェイプオブウォーターのギレルモデルトロ監督、ドライブのニコラスウェンディングレフン監督、そして往年の女優リンゼイワグナー。なんとも豪華なキャスティング。ここまでの人脈を集めた小島秀夫監督の実績はさすが。それだけの伝説的な人ですから。

 

元々コナミというゲーム会社のゲームクリエイターだったが、本当は映画監督になりたかったそう。過去作を見ても「ハリウッド映画みたいなゲーム」が多かった。ポリスノーツはSF版リーサルウェポン。スナッチャーはやったことないが、ブレランやボディスナッチャー風味らしい。

そして出世作になったメタルギアソリッド

 

メタルギアソリッド インテグラル(BEST)

メタルギアソリッド インテグラル(BEST)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: コナミ
  • 発売日: 2000/04/27
  • メディア: Video Game
 

 

発売日にこのゲームを買ったけど、現実の核問題や軍縮、当時最先端だった遺伝子研究を背景に、プロットは「ニューヨーク1997」「ザロック」のような対テロを描いた特殊作戦もの。それらの映画と同じように、敵陣に単独潜入し、敵に見つからずに任務を遂行する。敵を倒すだけだったゲームの世界に、敵を避けるステルスアクションゲームとして、ゲーム界に革命を起こした。革新的なゲーム性だけでなく、遺伝子によって定められた運命をどう乗り越えるか、限られた人生をどう生きるかといった、自由意志に踏み込んだストーリーがあり、当時遊んだときは幼いながらに感動した。そう感じたのは日本人の俺だけでなかったようで、メタルギアソリッドは世界中で大ヒットした。軍人が見ても驚くほど、最新の軍事情報のディテールも凄かった。本物のアメリカ軍人からの支持も絶大だったらしい。

当時、俺の身近にアメリカ海軍に軍人として在籍していた人がいた。彼はかなりのゲーマーかつ、かなりのシネフィルだったが、最初は日本語版しか発売されなかったため、ストーリーをわからずもゲームだけで進めていた。その間もところどころムービーに表示される軍事用語(例えばMUF=核物質不明量」などの単語)に反応していた。これは軍に詳しい人が作ってるんだな?とよく言っていて。

その1年後、英語吹き替え版のメタルギアソリッドインテグラルが発売したので買ってあげたところ、そいつは大興奮。すごいストーリーだ!!と連日大騒ぎ。そして彼は「無線の周波数はパッケージに書いてある!」に困っていたので、もったいぶった挙句、ネタバラシをしてあげたところ大爆笑。それ以降、「This is Snake. Colnel, Can you here me?(こちらスネーク。大佐、聞こえるか?)」が彼の口癖になったのは言うまでもない。

 

そんなわけでメタルギアソリッドはナンバリングタイトルとして5まで作られるほど、世界的なゲームになっていった。

 

1はSF色がありつつもまだ現実レベルに落ち着いていたが、2はSF色の強いストーリーとなって賛否が分かれた。かくいう自分も、2のストーリーは当時一度だけで理解することが困難だった。難解なストーリーだが、インターネットが当たり前に普及し、TwitterFacebookによって情報がコントロールされ、コントロールされた情報が選挙や思想に影響を与え、その横でAIが日常生活に浸透している現代2020年であれば、2のストーリーは理解しやすいと思う。それぐらい先取りしたストーリーだった。おそらくインターネットが発達してきた2001年当時から、小島秀夫は現代のヴィジョンが見えていたのだと思う。

 

METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY

METAL GEAR SOLID 2 SONS OF LIBERTY

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: コナミ
  • 発売日: 2001/11/29
  • メディア: Video Game
 

 

流石に4-5あたりからはSF設定が行きすぎて超能力レベルになってしまい、ストーリーに現実味が無くなってしまったが、現実味を楽しむというより、小島秀夫のメッセージ性が強いテーマ重視のゲームに変化していった。ちなみに3は1960年代を舞台、5は1980年代を舞台にしていて、それぞれが前日譚となっていた。

 

そしてメタルギアソリッド5のあと、小島秀夫が次作として、映画化もされた有名ホラーゲーム、サイレントヒルの新作ゲーム製作が発表された。

サイレントヒル

サイレントヒル

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: コナミ
  • 発売日: 1999/03/04
  • メディア: Video Game
 
サイレントヒル(字幕版)

サイレントヒル(字幕版)

  • 発売日: 2016/02/01
  • メディア: Prime Video
 

 

ギレルモデルトロが共同製作。主演はノーマンリーダス。体験版も配信されていたが、ここで有名なコナミ経営層と小島秀夫の間での確執、トラブルが起きた。このトラブルによって、サイレントヒルの新作企画は潰えた。メタルギアソリッドの続編も永久に中止され、小島秀夫コナミを退社。ファンにとっては悲しい出来事だった。

 

しかし小島秀夫はそんな逆境を跳ね除け、心機一転で会社を立ち上げた。そしてソニーの出資、ギレルモデルトロの支援もあり、本作デスストランディングを豪華キャストで完成させた。このエピソードはネットでよく見かけるので、そちらを参照願いたい。これも小島秀夫の作るストーリー並みに感動する。それだけで一本の映画にできるほどの泣けるストーリーだが、実際のゲーム、デスストランディングもこの実話が反映されたような素晴らしいゲームだった。

 

初めてすぐに安部公房の「縄と棒」の一節が出る。ストーリーの中でも、人は手を握れば相手を拒絶(棒)、手を開けば誰かと繋がること(縄)ができる、という説明があるとおり、そういう世界観のゲーム内容になっていた。小島秀夫コナミを退社したとき、何もないところから独立となったが、今までメタルギアファンだった少年たちが大人になったり、出世したファンの人たちが彼の独立を支援してくれたそう。今回のデスストは、そんな小島秀夫の体験を追体験できるような、人との繋がり=ストランドゲームとなっていた。

 

ゲーム性としても、今までは軍事系アクションゲームだったが、今回はまさかのお使いゲー笑。なんせ主人公は配達人。言ってしまえば、世界の命運を握る荷物を運ぶ、ヤマト運輸や佐川急便みたいな話。でもこれがなぜか面白い。オンライン対応ゲームだが、不特定の誰かと一緒に遊ぶのとちょっと違う。ネット上の不特定のみんなも同じ主人公を操作していて、プレイヤーの数だけ、同じ主人公の多次元が存在するような世界になっている。で、他のプレイヤーが辿った足跡や、置いたアイテムがあり、それを活用することで難所を乗り越える。そういう近からず遠からずな繋がりを持てる。これがとても良かった。で、誰かのそういったアイテムに、Facebookのごとくいいね!もできる。 クリアしても遊び続けたいのは、俺が託したアイテムや、自分のために使ったアイテムが、誰かが使って、その誰かを助けることになるから。この善意の繰り返しが、すごく心地よい。荷物を配達するだけなのに笑

 

今までメタルギアソリッドだけだったので、完全新作はストーリーもとても新鮮。説明することが難しいが、ゾンビ映画のようなデストピアな世界観に、心霊体験と三途の川といった、日本的宗教観を混ぜて、さまざまなSF映画ブレンドした感じ。クリアした今でもまだ完全には理解しきれていない。ややセリフでなんでも説明しすぎるきらいはあるが、それでも父と子というパーソナルな話にオチを持ってくる手腕に脱帽、そして感動。

ぜひぜひ、一度は体験してほしい圧巻のストーリーです。

 

龍が如く7 伊勢佐木異人町の想い出

 

龍が如く7 光と闇の行方 - PS4

龍が如く7 光と闇の行方 - PS4

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: セガゲームス
  • 発売日: 2020/01/16
  • メディア: Video Game
 

 

まだ半分ぐらいしかクリアしていないが、初めて龍が如くシリーズを買いました。というかセガのゲームを買ったことが相当久々だったことにいま気がついた。昔はセガサターンからドリキャスも持っていて、根っからのセガファンだった。ドリキャスシェンムーは大好きで、横須賀生まれだった祖父が、ゲームの映像=横須賀ドブ板通りを見て、再現度に驚いていたのを今でも覚えている。シェンムーカンフー映画みたいなストーリーで、グランドセフトオートが真似したとも言われる元祖オープンワールドでとても面白かった。ストーリーも泣ける感じだった。

 

 

 

今まで龍が如くシリーズに触手が動かなかったのは、任侠ものにあまり興味がなかったから。

今回の龍が如く7も同じ思いだったが、舞台がまさかの地元横浜、しかも伊勢佐木町。ゲーム内では伊勢佐木異人町という名前になっている。これは買うしかないと思って今に至る。

でもヤクザにいい印象がないから避けてきたシリーズなわけで。大抵フィクションのヤクザはなぜか義理人情に厚い正義として美化されて描かれるが、現実世界でそんなヤクザを見たことがない。「なにキレイごと言ってんだろう?」という気持ちしか起きず。たしかに人情味がある人はいるにしても、彼らのシノギ=ビジネスとは「人(主にターゲットは女性)の人生を無茶苦茶にして廃人にし、それでもなお破壊する」というもので、文字どおり「骨の髄までしゃぶり尽くす」。そんな人の道を外れた方々、すなわち外道。正義もクソもない非情さですよ。

前にドキュメンタリーでヤクザと憲法みたいな話があって、その内容はたしか、ヤクザに憲法は適用されていないのか?みたいな、暴対法の厳しい取締りを扱ったドキュメンタリーだった。だが俺に言わせれば、憲法を適用したくないくらい、鬼畜の所業してたよなと思う。簡単に言うとアイリッシュマン的な世界観です。

ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか

ヤクザと憲法――「暴排条例」は何を守るのか

 

 

そんなわけで始めた龍が如く7だけど、これが予想以上に面白くてびっくり。しかもヤクザにいい印象がない俺がやっても、すごい楽しく感じる。地元補正なくても、控えめに言って傑作。楽しい連ドラを見るかのように、ストーリーが気になって、進めるのが楽しくて仕方ない。これはゲームという名のドラマ、いや映画と言っていいレベル。

 

最初は中井貴一が組長役と聞いて、ミキプルーンの優しそうなおじさんが組長なんて、と思ったけどさすが俳優。とても渋い組長さんを演じてます。この変わりっぷりは驚いた。メタルギアソリッドのスネークこと大塚明夫も相変わらず渋くて、かっこいいです。

 

舞台横浜の再現度も素晴らしく、関内で暮らし続けた俺も認めるほどの、驚きの再現度。

かつて私の父親(建築士)が建てたビルもありました。当時は父に「どうだ、俺が建てたビルだすごいだろ!」と言われましたが、どう見てもビルの立地は風俗店案件で、実際に入居したのも風俗店で、「これじゃ友達に自慢できないよ」と当時は思いましたが、今こうして龍が如くに登場したビルとして、ちょっと誇れるようになりました(笑)

チンピラに絡まれるゾーンも、わりかしリアルでした(笑)子供の頃から伊勢佐木町のゲーセン通いが日課で日々入り浸っていましたが、格ゲーしていたらリアルファイトにも一触即発みたいな光景もよく見ました。他には、他店よりゲーム代金が安いけど、立地がビルの地下にあり、行ったら絶対にカツアゲされると言われた、怪しいゲーセンも伊勢佐木町にかつてありました。

あと、さっきまで遊んでたゲーセンが小宮悦子の夕方ニュース番組で紹介され、麻薬の取引現場として放送されたり。、え、いつのまにか麻薬取引してたの?!ずっといたけど??!という驚き。

 

でも龍が如くのゲーム内で絡まれるより、今の時代の現実の伊勢佐木町はもっと安全ですw あと、ホームレスはカツアゲしないし、昔のホームレスにはたしかに当たり屋がいたけど、カツアゲするのは見たことない。いまは年老いたホームレスしかいないから、当たったら普通にあの世に昇天するからなのか、当たり屋は激減、というかいないです。そもそもホームレスは基本平和主義者ばかりで、保険もなく医療機関にも行かない人が、暴力をふるうリスクも取りません。

ゲーム並みに危なかったのは20年以上前。いまはだいぶ平和になりました。昔はこのゲームみたいにけっこう絡まれたんじゃないかと。昔は族が伊勢佐木町歩行者天国を占拠してることもあったし、ヤクザの銃撃事件もあった。

紅白に出場し日本を代表するストリートミュージシャンとなった某シンガーソングライターも有名だが、彼らは路上演奏していた時代、母校の中学校のジャージを着て演奏していたことは有名。この中学校は、ヤンキー進学校の強豪としても有名で、昔ここの生徒にカツアゲされました(笑)だからあの恐ろしい時代の伊勢佐木町で、たった2人で路上ライブするなんてやたら勇気あると思ったら、母校が強豪校、そういうカラクリだったんすよ…。

ゆず ソングス in Prime

ゆず ソングス in Prime

  • 発売日: 2018/08/31
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

ゲーム内では伊勢佐木異人町と呼ばれる通り、私の数少ない親友も韓国、中国、フィリピンなど多国籍。親友はお金持ちの子どもが多かったが、ゲームの中では身寄りのない移民二世の受け皿として水商売があると描かれていた。これは現実で、未だにそういう所は多い。ゲームの中でも、白と黒に分けられない、グレーなところで生きる人々が描かれるが、伊勢佐木町近辺に住む人にとって、グレーな世界は日常だ。かつての飲食店形態の風俗店、赤線地帯はなくなったが、それでも万引き家族のような世界観はまだ残っているのが伊勢佐木町だ。

万引き家族

万引き家族

  • メディア: Prime Video
 

 

伊勢佐木町近辺は笑点の故・桂歌丸師匠の地元でもある。歌丸師匠も実家は風俗の元締めとかだったと思う。

 

桂歌丸 大喜利人生 笑点メンバーが語る不屈の芸人魂

桂歌丸 大喜利人生 笑点メンバーが語る不屈の芸人魂

  • 作者:日本テレビ
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2018/12/18
  • メディア: 単行本
 

 

歌丸師匠は人情味溢れる落語家として有名だが、伊勢佐木町も恐ろしい側面を持ちながらも、実は人情味溢れる街でもある。俺はこの街の人の優しさに救われることが何度もあった。どんな職業だろうが、どんな国籍だろうが、なぜか人情味のある人が多い、そんな不思議な街。ゲーム内でも、性格の悪いソープ店長が実は人情味ある優しい人だったエピソードがあるが、あんな感じで一見リアリストでキツイんだけど、実は優しい人が多いのが伊勢佐木町近辺の人々の特徴です。そんな伊勢佐木町の良い特徴をよく見つけてしっかりよく描いている、本当にいいゲームだと思います。これからも楽しみに進めますよ!

2019年ベスト

早いものでもう2020年。いろいろとお世話になりました。本年もよろしくお願いします。

 

と言うわけで、2019年の映画ベスト。

順不同。

 

 

 

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ Blu-ray2枚組

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ Blu-ray2枚組

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

 

Terminator: Dark Fate

Terminator: Dark Fate

  • アーティスト:Original Soundtrack
  • 出版社/メーカー: La La Land
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: CD
 

 

「アイリッシュマン」オリジナル・サウンドトラック

「アイリッシュマン」オリジナル・サウンドトラック

 

 

 

見た映画の本数はおそろしく少ない1年だったが、これほど傑作揃いな年はなかなかないと思った。すごく良い映画ばっかりで、見るたびに感動したり、心にグッとくるものがあった。今年の印象は「哀愁」。ひたすら渋い映画が多かった。

 

アリースター誕生はレディガガの歌声と、ブラッドリークーパーのミドルエイジクライシスな鬱描写に衝撃。素晴らしい歌声に圧倒されるんだけど、イーストウッドばりの鬱展開な感じで、哀愁漂う渋い映画に。

 

ゴジラ KOMは、前作のギャレスエドワード版ゴジラが、オリジナル第1作目に準じたわりと真面目な作りで、それはそれでよかったんだけど、個人的に小さいときから馴染みがあったのは平成ゴジラシリーズ。昔は東宝系列の映画館があって、いつも仮面ライダーゴジラが上映されていた。ほぼ毎年公開されていた平成ゴジラシリーズだったが、今思い出せばわりとおバカ路線直行な内容で、当時おバカだったキッズの私も楽しんで見ていた。ゴジラ VSデストロイヤーで、一旦毎年の上映が無くなってしまったが、あれから20何年。こうして100億円以上投下してアメリカ軍の現役兵器全面協力な感じで、平成ゴジラシリーズをリブートしてくれたことはとても貴重。頭空っぽにして見てました。続編も楽しみです。

 

ワンスアポンアタイムインハリウッドは、「ザ・タランティーノ」な一作で、これで映画監督引退も囁かれる一作。引退にはふさわしい、タラちゃんが大好きなものを詰め込んだゴージャスな一作。ノレる人にはノレるが、ノレない人(具体的には60〜70年代のハリウッド映画に興味がない人)にはまったくノレない映画。そしてそれはタランティーノ映画のいつも通りなんですが…。ライムスター宇多丸だったか、町山智浩だったかがタランティーノにインタビューした話で、劇中のデカプリオの焦りは、タランティーノ本人の焦りが投影されているらしい。昔ながらの映画制作が通用しなくなってきた時代のお話で、現代のタランティーノもきっと思うところがあったんでしょう。とはいえやっぱりこれだけ本作も大ヒットさせるんですから、これからも好きなものに真っ直ぐに、面白い映画を作り続けて行ってほしい(切なる願い。

 

ジョーカーはまさかの怪作。この映画の立ち位置は1999年のファイトクラブみたいな感じ。奇しくも20年後の2019年にまたしても傑作ができた。ストーリー自体はわりとよくある話というか。そもそもの骨組みは、タクシードライバーキングオブコメディにインスパイアされたというだけあって、ありがち。それでも、世の中の社会常識や価値観を試すような、心理実験されているような、見る毒薬といってもいい映画。いろいろな解釈ができる映画でもあり、見た人によって映画の伝えたいメッセージがまったく変わる、鏡のような映画。そんな数あるテーマの中で、中核となる一つテーマは思いやりの欠如、共感の欠如、そして自己責任が蔓延した世の中を描いた話ということ。

思えば仕事でも私生活でも、「自己責任」という言葉を当たり前に聞くようになったけど、この言葉ほど為政者にとって都合いい言葉はない。そう言われたら議論も止まるし、議論するつもりのない言葉だ。これがいいなら、もう全部自己責任じゃない?という負の無限ループ、思考停止になる。そんな世の中で狂気に飲み込まれ、拳銃で暴走する男の話がジョーカー。なかなか怖い話。

 

ターミネーター ニューフェイトは、まさかのランクイン。正直、開始早々の展開とかは未だに受け入れがたいけど、それでも今まで作られたT2以降のターミネーターの中では一番面白かった。もしかしたら期待値がかなり低かったから、その反動なのかも?笑 ノンストップアクションの連続で、新キャラがかっこいいアクションしつつ、シュワちゃんとリンダハミルトンが横から渋くサポート。これがなかなか良かったっす。売れてはないけど、評価はそんなに悪くないのは納得。

 

アイリッシュマンは、スコセッシのベストアルバムとも評されていたが、見たらいやいや全然、ベストどころか完全新作じゃないっすか、という内容で。クイーンで例えるなら、イニュエンドウに近い感じ。もしかしてスコセッシのラストアルバム?みたいな趣きで。しかも今までのスコセッシ映画のイケイケ構成(ウルフオブウォールストリートのバブリーな描写を見てほしい)に比べて、ずったりずったりのんびり構成。しかしその分哀愁、渋さが全マシチョモランマ級。見た後はもうお腹いっぱいになる、見るラーメン二郎みたいな映画でした。

スコセッシはマーベル映画はシネマじゃない発言が尾を引いてますが、この人はラーメン二郎の店主みたいなもんで(⇦勝手な妄想)、最近流行の女性ウケの良い、油少なめの優しい味のラーメン屋について、「ガッツリじゃなきゃラーメン屋じゃない、ニンニク入れますか?」と言っているようなもんだと思うと、わかりやすいかもしれません(わからない)。

スコセッシは決して間違ったことは言ってないんだけど、世の中にはいろんな映画、いろんなラーメンがありますよ、という結論になりがちなニュースだったんですが、それでもやっぱり俺はマーベル映画より、スコセッシ映画、優しいラーメンよりラーメン二郎が好き。

脱線しましたが、ちゃんと順位をつけるならアイリッシュマンが1位になる出来だったと思います。スコセッシはやっぱり凄いです。見た後になんらかの傷が心のできてしまうような、そんな胸にグサッとくる映画をスコセッシは今までもよく撮ってきたわけで。

アイリッシュマンを見たあとは、「ゴジラ KOMや一部のマーベル映画みたいな、口開けてボケーっとさせられる映画もシネマだけど、これが本当のシネマなんだよ、坊や」と、スコセッシ言われたような気になりました。

アルパチーノもまさかの熱演。もう近年は「過去の遺産で食ってるんて」感ありありの省エネ演技で、定年退職後にコンビニでバイトするおじさん感覚な出来が多かったアルパチーノですが(タランティーノのワンスアポンアタイムインハリウッドにも出てましたが、いわれなきゃアルパチーノだと気がつかないステルス感でした)、本作アイリッシュマンはかつてのギラついた、俺たちが恐れたあのアルパチーノがついに復活。アルパチーノといえば主役級映画では突然名演説シーンをかますシーンがあることでも有名ですが、今回もちゃんとアルパチーノの演説ありました。

そしてなんといってもジョーペシ。半ば引退だったところを、デニーロが必死に説得して出演させたとのことですが、もう全編にわたって円熟のいぶし銀演技で、すっかり魅了されました。グッドフェローズ、カジノでの狂犬キャラブチギレ演技で名を馳せた氏ですが、今回のアイリッシュマンでは、自分で誰かを殺めたりしない「手を動かさない」ボスで、決して怒鳴ってキレないけど、もっともワル〜いやつを見事に演じてくれていて、素晴らしかったです。

 

2020年も良い映画を見ていきたいです。

 

共感したお話

Excelにスクリーンショットを貼り付ける仕事で鬱病になった話 - メモ帳

 

自分と同じ職業、同じような仕事をしているお話で、他人事に思えなかった。人がやる気を失う過程を克明に描いている。どこかでボタンを掛け違えていたら、俺もメンタルを崩していたと思うし、これからも起こりうる話だと思う。

 

仕事がつまらん。

より正確には、「自分の能力を必要とされていない」と感じた。

だって、Excelスクリーンショットを貼り付けるのって、両手さえあればできるからね。

Alt + PrintScrn、Ctrl + V、Alt + PrintScrn、Ctrl + V、……

仕事がつまらなくて、必要とされていないと思ったら、そりゃメンタルも崩すよね。

 

・お客さまと会議を繰り返し要件を固める(要件定義フェーズ)

・それをExcelの設計書に落とし込む(基本設計・詳細設計フェーズ)

・出来合いのソフトのパラメータを弄り、Excelスクリーンショットを貼り付ける(製造)

・ソフトを手順に従って操作し、Excelスクリーンショットを貼り付けてエビデンスとする(単体・結合・総合テスト)

といった具合である。

 

つまり、高等数学も、必死に勉強したプログラミングも、一切使わない、そんな仕事だ。

そんな仕事の合間合間にやってくる飲み会では、同い年の先輩(先輩は学部卒のため)に幹事の仕方、酒の注ぎ方で注意される日々……。

あるあるネタすぎて共感しかない。俺の周り、俺自身もそうかもしれないが、実際こんなことがとても多いですよ。正直、なにが楽しくてやってるのかわからない。上流工程をやったり管理する仕事をやらないと出世しないとか言われるけど、そればっかやってる人たちっていうのは、エンジニアなら効率化するようなことをできない人ばかりなんです。コミュニケーションと管理しかしてないんだから、技術的なことできないんですよ。だから当然技術に明るい人なんてあんまりいないんですよ。だからいつまで経っても非効率なことばっかりやってんのね。本当、正気じゃない。

この業界はそういう単純作業もわりと多くて、クソほど非効率なこと、すなわち紹介したブログに書かれたようなエビデンスの画像をひたすらExcel方眼紙に貼り付けることとか、本当に無駄が多い。技術を扱っているのに、技術力がないために、単純作業をさせるしかないことを意味するが、おそらく彼の上司も、彼の周りの人も、そういう単純作業を自動化なり、簡略化するやり方を知らなかったんだろう。「だからSierはダメ」と害悪論を語るつもりはないが、往々にしてある話。俺の場合、そんなクソくだらない単純作業を自動化したり、効率化させることに楽しみを見いだせたので、そこはラッキーだったのかもしれない。だが、それでGoogle行けるぐらいの技術力ついたかと言われたら、NOとしか言いようがない。そんなスキルは就職活動のなにに役立つのかと。

それでも、そういった単純作業を真面目に手作業でやってるフリして、実はツールなどで自動化、効率化していて、既に終わってるのに一生懸命まだ作業をやってるフリするのは楽しい(我ながら性格が悪い)。定時間際になって、いま終わった風に振る舞うことも本当に楽しい。「こんな単純作業振るぐらい必要とされてないんだ」と思うのも良しだが、「どんな単純作業でも、やるだけやったら金だけはきっちり巻き上げておかなきゃ」という気持ちと、「こんなアホらしい作業で金もらえるならまあいいか」という風に思わないと、そりゃあやってられないわな。

アイリッシュマン

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面白いかと言われたら全然面白くないし、長いかと聞かれたら長すぎる、と答えてしまうそんな映画。同じスコセッシが監督した映画、ウルフオブウォールストリートやグッドフェローズのような、ハイテンションな内容を期待すると肩透かしを食らう。テンポはミーンストリートに近い。あれぐらいのゆったり感。とはいえこのアイリッシュマンは、まさにスコセッシの集大成と言っていい、ものすごい映画だった。

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スコセッシと言えば、タフガイすなわち手強い男、転じて荒くれ者、マフィアやヤクザな男たちをよく描いてきた映画監督だった。盟友ロバートデニーロも、スコセッシ映画でそんなタフガイをよく演じていた。日本で例えるなら、、、北野武大杉漣の関係みたいな感じか。スコセッシも北野武も、わりと暴力が身近にある環境で育ち、暴力的な映画を撮ってきた。暴力の描き方も2人は似ている。俺の育った環境も、最近ゲーム龍が如くの舞台になってしまったような、タフガイの多い繁華街だった。その観点で、北野武やスコセッシ映画の暴力は「あ、これこれ!」と思ってしまう、リアルな暴力、リアルなタフガイたちの姿だった。漫画クローズがファンタジーのヤンチャなら、ウシジマくんを読むようなリアル感。国や人種は違っても、タフガイたちの行動原理ってのは似るもんなんだなと、スコセッシ映画を見てよく思っていた。そんな風に、タフガイや"男らしい"暴力をずっと伝えてきた監督、出演者たちが総出となって、2019年にわざわざアイリッシュマンというマフィア映画を撮ってまで伝えたかった、「男らしさとは?」という問いかけ、その行き着いた答えに打ち震えた。絶対に忘れられない、そんな必見の一作。いまのところ劇場とネットフリックス限定公開だけど、ブルーレイがあったら間違いなく買う。

 

ターミネーターニューフェイトを見て「ポリコレや女に配慮し過ぎ」と言ってる人たちに、このアイリッシュマンを見せたとしたら、多分死んでしまう。なぜなら、アイリッシュマンのスコセッシのメッセージは、そういうこと言う人たちに冷水を引っかける話だから。タフガイじゃない俺でさえもつらいぐらい、タフガイたちにや男らしさにこだわる男たちには辛辣なオチ。タフガイを撮ってきたスコセッシがこのオチを描いたことに脱帽でもある。

カミソリの米ジレット、「男らしさ」を問いかける広告動画が話題に。ネットには賛否の声 | ハフポスト

ジレットCM 「The Best Men Can be」

世の中の変化もあるのかもしれないが、男たちに「変わろう」と促すのではなくて、スコセッシはアイリッシュマンでまず足元を見させる。「お前らがやってきたこと、そしてその末路はこうなんだよ」と振り返りさせる語り口は、伝えたいテーマが淀みなく綺麗に伝わる。

 

アイリッシュマンでのデニーロの中間管理職的な大変さと、家族に見放されるところに共感、同情したが、女性がこの映画のデニーロを見ると「都合の良い男」「当然の報い」という感想になる不思議。当然の報いなんだけど、デニーロの肩を持ってしまいがちなのは、俺も古い男側の人間なのかもしれない。

 

デニーロと同じくタフガイをよく演じてきたアルパチーノも、ヒートを思い出す競演。そして意外にも初スコセッシ映画出演。ここ最近はもう大御所になってしまったからなのか、どの映画に出てもわりと省エネ演技感がすごかったけど、今回久々にパチーノが本気出してました。パチーノといえば元祖松岡修造と言うべき、熱血演説、熱血説教、そしてブチ切れキャラの演技で名を馳せた方ですが、今回はキャリア総決算な感じで良い演技でしたよ。

アイリッシュマンの男らしさに対してのアンサーと、登場人物の末路については、ヒートと対になる話でもある。

 

パチーノは熱血演説が行き着いてアメフトコーチ役までやってました。こんなコーチが会社にいたら俺も仕事さらに頑張る。

エニイ・ギブン・サンデー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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パチーノの名作はいろいろあるが、好きなのはこれ。現代のラッパー、すなわちタフガイたちにも影響を与えた、ギラついたパチーノのバイオレンス映画の傑作。

スカーフェイス [Blu-ray]

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そしてスコセッシ映画常連のジョーペシも久々に出演してました。アイリッシュマンにジョーペシが出ると聞いて、まず思ったのはあのグッドフェローズやカジノで我々に見せつけた泣く子も黙るブチ切れ、狂犬キャラの再演。

"Casino" - Pen Scene

"Goodfellas" - Bar Scene

昔のジョーペシといえばこのイメージが強すぎて、ホームアローンの泥棒役なんか見ても「本気出してない?」と思ったほどでした。

アイリッシュマンでもかつての狂犬キャラを期待しましたが、パチーノとキャラが被るからなのか、今回は仁義なき戦いの山守組長のような「手を動かさない」ワルを円熟の演技で魅せてくれました。劇中、デニーロの子供がジョーペシに懐かないストーリーがありましたが、かつてのジョーペシを知る俺からすると、「当たり前だろ!怖すぎるよ!」と思いました。

 

 

アイリッシュマンの予告編で流れていた、マニッシュボーイという歌も、この映画のテーマに近い感じ。見た後にこのサイトで歌詞を読むと、映画とのリンクを感じます。

Mannish Boy

Mannish Boy もしくはオトコらしいオトコノコ (1955. Muddy Waters) - 華氏65度の冬

 

 

マーティン・スコセッシ「マーベル作品は映画じゃない」発言ふたたび ─ 「侵されてはならない」とのコメントが物議、その背景と真意は | THE RIVER

「映画館がアミューズメントパークになりつつあります。それは素敵なことだし、良いことだと思いますが、すべてが飲み込まれてしまってはいけない。あの手の映画を楽しむ人々にとっては良いことですし、彼らの仕事はすごいと思います。ただ、単純に私の仕事ではない。(マーベル映画は)“映画とはああいうものだ”と観客に思わせる体験を生み出していますよね。」

 

↑スコセッシだからこそ言える発言。スコセッシ自身わりとタフガイ寄りだから、「俺より面白い映画を作ってみやがれ」ってことなんだろけど、アイリッシュマンみたいな大傑作を撮った人が言うんだから、マーベル関係者はもうぐうの音も出ないだろうね。

 

 

ターミネーター:ニューフェイト

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幼い頃、親が借りてきたターミネーター2を見たことで、映画好きになりました。ダビングしてもらったターミネーター2のVHSは、軽く300回以上は見ている。そんなマイ殿堂入り映画がターミネーター2です。だから思い入れもひとしお。当然、シュワルツェネッガー映画に育てられて成長しました。

 

ターミネーターは今回を含めて、映画はなんと6作、TVドラマは1作。マーベルユニバースは色々なキャラを出して1つのアヴェンジャーズだけど、ターミネーターはT800とコナー親子ぐらいのキャラしかいないのに、よくこんなに長く続いたものです。下手したら、各々作品のターミネーターとコナー親子を集結させて、スカイネット打倒を目指すアヴェンジャーズが作れるレベルです。

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アメリカでも日本でも、世間一般的に1と2が殿堂入り扱い。その他345に関しては自分も否定的ですが、決してつまらない映画ではないんですよ。アクションはどの続編もすべて一級品。ただ、1と2を作ったジェームズキャメロンほどの、深い掘り下げ、作り込み(作家性、と呼ばれる所)がないだけで。ギチギチに詳細設定を作り込み、本編はひたすら引き算された映画になっている「鬼才」ジェームズキャメロンですから。ジェームズキャメロンの映画アバターも、パンドラという架空の惑星、架空の言語を作ってしまった、そんな鬼才、妥協なき映画製作をする人。

エイリアンシリーズのナンバリングタイトルは、リスク承知でジェームズキャメロンのような作家性の強い監督だけを起用している特殊なシリーズだが、ターミネーターシリーズは、リスク少な目、そこそこ面白い映画を作るシリーズになっていった。

 

ジェームズキャメロンのような突出した才能や作家性を持った監督を探すより、そこそこ面白く、それなりに稼げる方をターミネーターシリーズは選択したと。ただ、やっぱりファンとしてはまたジェームズキャメロン印であるとか、作家性バリバリなターミネーターを見たかった。そうこうしていたら、もう6作目になっていました。

 

そんなわけで、「T2の正統な続編」「今までの345は無かったことに」を謳う、今回のターミネーター。邦題ニューフェイト 、原題ダークフェイトを見ました。

 

実は見る前に、海外リーク情報サイトでプロットを読んだのですが…これを読んで以降、まるで劇中のサラコナー。ヤケクソ状態。「こんな映画絶対に見るかボケー」と言っていました。同居人の必死の説得で、仕方なく見に行きましたが、もう見る前から、期待半分どころの騒ぎじゃなかったです。期待値は氷点下マイナス、ストロングゼロ。「ダークフェイトは、ジェームズキャメロンが脚本と編集、製作総指揮として参画している。だから正統な続編なんだ」という触れ込みでしたが、ターミネーター5ジェニシス/新起動でのジェームズキャメロンの嘘宣伝(以下ツイート参照)にまんまと騙されたので、今回も見る前から話半分。まったく信用していませんでした。

 

映画がスタートして、リーク通りのある展開が開始3分ぐらいで起きて、この時点で「もうダメ、さようならターミネーター 、さようなら俺の青春」、そう思ってずっと映画を見ました………。その結果…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにこれ、すげえ面白いんだけど!!!!!

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以下見た後のツイート。

 

アーノルドシュワルツェネッガーごめんなさい、リンダハミルトンごめんなさい、ティムミラーごめんなさい、「見たくない、行かない」とスネて困らせた同居人ごめんなさい。でもジェームズキャメロン、てめえはダメだ(理由は後述)。

何はともあれ、本作ダークフェイトは最高でした!「T2の正統な続編」の売り文句は伊達じゃない。とはいえ、見た後なにがすごかったのかいまいち言葉にできず。色々思い返してみて、ここが良かったダークフェイト。

 

新キャラ グレースのかっこよさ

ターミネーター12でのカイル、シュワちゃんにそれぞれ相当する守護者役がグレース。これがものすごいカッコイイ。このかっこよさはなんだろうと思ったら、カイルや守護ターミネーターだけでなく、デッドプールに近いキャラクターなんですよ。身体を痛めつけられて改造され、副作用がありながらも、強くなったその身体で一途に恩人を守り抜く。デッドプールはコメディだけど、よく見たら相当悲劇な主人公だった。グレースはまさにデッドプールと同じ。そしてターミネーターシリーズのカイルとの親和性の高さ。監督ティムミラーがもっとも得意とするキャラクターだったんですよ。だから余計にグレースが素敵に見えたのかもしれない。予言するけど、10年後、きっとグレースに憧れたと言う大人がたくさん出るはず。マッケンジーデイビスはこれからさらに人気出るね。

 

怒涛のアクション

リンダハミルトンが宣伝で「前より10倍凄いアクションで、本編を見たら"なんてこった、なんてこった"と思う」と言っていたが、その言葉にウソはなかった。今までのターミネーターもキラリと光るアクションシーンが必ずあったけど、今回のダークフェイトはシリーズ最高峰と言っていい。しかも止まらない、ほぼノンストップ。まったくダレない。さすが、デッドプールのティムミラー。アクションの作りはとても上手でした。この感じ、マッドマックス怒りのデスロードの無駄のなさに近かった。

 

リンダハミルトンの復帰

345がグダついてたのはリンダの不在が理由なのか?と思うほど、画面に出るたびにビシッとビンタされたような緊張感。そして銃撃する姿が相変わらず似合う。本当にかっこいい。

 

シュワルツェネッガーの花道

本作でターミネーターを演じるのは最後と言っているシュワルツェネッガー。いつもより出番は少ないし、あくまでもそれはストーリーの一部ですが、シュワちゃん引退花道という内容でもありました。いつだって俺たちのヒーローとして映画に出ていたシュワちゃん。繊細な演技をする俳優ではなく、いまの時代ではもう珍しくなった「スター」。「背中で語る」、そういう俳優。そんなシュワちゃんの背中を見て育った世代ですから。

今作のシュワちゃんは、ターミネーターを演じつつ「一人親方個人事業主兼主夫」を演じています(ありのままの事実です)。シュワちゃんは大人になりきれない男性ファンに、こう語りかけてるようでした。

「夫婦生活ではターミネーターのように、何があろうとミッション(家事、育児)を率先して遂行するんだ。そのミッションではターミネーターのように、疲れ知らずにやるんだ。そしてターミネーターのように"うんうん"と、棒読みでいいからずっと奥さんの話をずっと聞いてあげるんだ。そしてたまにはターミネーターのようにボケてみるんだ」

 

こんな事は劇中で言っていませんが、私はシュワちゃんの背中から上記メッセージを受け取りました。イクメンシュワちゃんの姿を見て、やっぱりシュワちゃんは俺たちのヒーローだと思いました。

そしてシュワちゃんといえば、なぜか西部劇っぽくなる点も健在。今までの傾向を見ても、おそらくシュワちゃん、本当は西部劇に出たかったのかな?と思ってました。ミステリー小説「そして誰もいなくなった」を映画化したサボタージュも、途中まではデビッドエアー印の麻薬犯罪サスペンスが、見終われば昔の西部劇になっていた。ラストスタンドは未見だが、より西部劇っぽいらしい。

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ダークフェイトではティムミラー監督は、「勇気ある追跡(トゥルーグリット)」や「オレンジ牧場」みたいにしたかったと言う通り、かつて荒くれだった年寄りガンマンが子供を助けるストーリーを、T800ことシュワちゃんに当てはめた結果、これが見事に大成功。いまの歳をとったシュワちゃんでなければ、この哀愁は出せないですよ。

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完全燃焼物語が復活

T1とT2って、独立してる一話完結の話だったと思うんです。で、そのストーリーの中でキャラクターが完全燃焼する話だった。わりとスポ根というか。キャラクターが社会的信頼を失ったり、片道切符の任務だったり、肉体的にも散々な目、危険な目に遭って、体一つ、一か八かで人生を賭けて難敵に立ち向かう。難敵はフルメタルジャケットハートマン軍曹のように恐ろしくて、ネチネチとしつこい。そんな敵と立ち向かったあと、すべてを失うが、その後に見える、たった一筋の希望。

こんな話がまさにT1、T2だった。バッドエンドではないが、ハッピーエンドでもないこの感じが、ダークフェイトはしっかり継承してました。

 

運命は自分で選ぶもの

No fate, But we make.は、ターミネーター2のテーマだったが、これも復活していた。具体的には

  • 虐げられた人、または決められた運命の下にある人が
  • 未来からきた守護者に命を救われ
  • 戦いによって自身が成長することで
  • 未来を選ぶことができるようになる

男性優位の80年代初期に、シングルマザーとして自立する(せざるを得ない)ことを覚悟決める話がターミネーター1だった。ターミネーター2は定められた運命を生きていたサラとジョンが、運命を変える話だった。サラは精神病院で虐げられ、ジョンは養子に出されたことでグレていた。虐げられたことで心に傷を抱えたキャラたちが、奮発して未来を変えて自立していく。これがターミネーター12だった。これが今回のダニーとグレースの新キャラ、そしてサラとT800に対しても付与されていた。失って得るものもあり、劇中は小さな役割だが、存在を感じるジョンコナーのリーダーシップ。これはなかなか良かったです。

 

ダメだった点

ここだけ微ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメだったところはあまりないけど、これはやっぱりいただけなかった。あれだけエイリアン3に文句言ってたジェームズキャメロンさん、あなたがこれやったらあかん。世代交代で新しいキャラにしたいのもわかる。退場させたいキャラなのもわかる。だがその退場のさせ方。ティムミラーならきっと良い脚本を作ったんじゃないかなと思った。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』、あのキャラクターを殺したのはジェームズ・キャメロンのアイディアだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ終わり

 

 

 

まとめ

評価は高いけど興行収入が惨敗とのことですが、きっとこのダークフェイト、カルト映画化すると思う。ティムミラーはジェームズキャメロンと編集中に大バトルしたらしいが、それってまるでエイリアン3の時のデビッドフィンチャーなんですよ。

 

ファイナルカット権が無くて、従うしかなかったところもそっくりで。それでもカットしきれない、滲み出るティムミラーの作家性。きっと大化けする監督だと思います(しなかったらちょっと悲しい)。俺としてはティムミラーで続編が見たい、素晴らしい一作でした。

ジョーカー

 

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すっかり時は過ぎてしまったが、公開日に見に行った。前評判どおりの衝撃作。スコセッシの往年の名作タクシードライバーと、キングオブコメディ(こちらは未見)をインスパイアしたというが、タクシードライバーも公開当時、ジョーカーのように「危険な思想の映画」という扱いをされたのだろうか。

 

ジョーカーについて、一番しっくりした感想はこれ。

DC映画『ジョーカー』海外レビュー、評価、感想 ─ ベネチア映画祭で絶賛「まさにジョーカーが望んだ映画」 | THE RIVER

米IndieWireは「世界を転覆させ、その過程で我々を狂わせる作品」だとも記した。「良くも悪くも、まさしくジョーカーが望むだろう映画です」

 

ジョーカーが望むものってどんなもの?という問いは、故・伊藤計劃氏の映画ダークナイト評が詳しい。

Watch the world burn. - 伊藤計劃:第弐位相

ジョーカーは知っているのだ。秩序に身を置きながら自警団として秩序を破らざるを得ない矛盾を抱えたバットマンと、世界がカオスに叩き込まれるのを心の底から望みながら、秩序という世界の枠組みそのものが崩れてしまうと「ゲームを楽しめなくなる」という矛盾を(楽しそうに)抱えた自分が、ともに化け物、コインの表裏であることを。

ジョーカーは人間の負の面を露わにする装置として、ゴッサムの夜を踊る。

 

公開後、まさにこのコメントのような状態になっているのはご存知の通り。みんなジョーカーに狂わせられてしまった。作品の解釈を巡ってはもちろん、格差の問題、機会不平等についても。内容は多岐に渡って。なんというか、この映画を仕掛けた監督そのものがジョーカーだと思った。

監督トッドフィリップスといえば、ハングオーバーとかデューデートとか、その辺のわりとボンクラ系コメディ映画を量産してきた人だと思ってたけど、今思えばその映画群に今回のジョーカーの原型となる人物がいた。特に、ハングオーバーザック・ガリフィアナキスが演じてるアラン(中年ヒキニート)は、わりと今回のアーサーに近い。そんなアランが友達を誰も作れず、親とだけ生活していったストーリーを考えるとジョーカーのメインプロットになる。

トッドフィリップスがコメディ映画を作らなくなって久しいが、こんな理由があるそう。

 

『ジョーカー』監督は「文化のせいでコメディは死んだ」と本当に言ったのか ─ 米報道が物議醸す、タイカ・ワイティティも反応 | THE RIVER

「このごろのウォーク・カルチャーの中で、笑いを取ろうとしてみましょうよ。“もはやコメディが成立しないのはなぜか”という記事がいくつか出ていましたが、僕からすると、それは、めちゃくちゃ面白い人たちが“やってられない、誰かを怒らせたいわけじゃないし”という感じになっているから。Twitterで3,000万人を相手に議論することは難しいし、そんなことはできない。でしょう? だから“僕もやめよう”と。僕の作るコメディは――すべてのコメディにそういう面はあると思いますが――不謹慎なもの。そこで、どうやってコメディ以外の方法で不謹慎なことをやろうかと考えたんです。」

 

初めて知った名詞だが、ウォークカルチャーとは、社会的公正を重んじ、差別の撤廃を掲げる運動のことなんだそう。例えばフェミニズムセクシャルマイノリティーのムーブメント、人種差別に対するムーブメントなどの総称的な意味を持つんだとか。

 

トッドフィリップスのコメント通り、この人のボンクラ系コメディ映画は、下ネタから始まり、人種ネタ、性別ネタとひたすらに不謹慎だったw でもそれが面白かったわけだが、このご時世はそうもいかんということで、店じまいをした事実がわかる。

ハングオーバー! [Blu-ray]

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人が笑う理由にはいくつかあると思うが、その本質は滑稽なこと、くだらないことだと思う。じゃあその滑稽なこと、くだらないことはなんだといえば、それはたぶん誰かの悲劇なんだろうね。誰かがバナナの皮で転んでも見え方によっては、人は大爆笑する。ダウンタウンの「絶対に笑ってはいけない」も、あれだけ人がバットで尻を叩かれても、みんな笑う。叩かれる本人たちにしてみればすごい苦行だと思うが、神の目線としてテレビで見ていれば、本人が笑いに耐えきれずバットで尻を叩かれる光景は、尋常じゃなくおかしい。誰かの悲劇は、喜劇になるということは、古今東西変わらないんだろう。ジョーカーはまさに、笑いとは?を真摯に向き合って作られた映画だと思います。日本でもお笑い芸人からのコメントが多いのも、ちょっとわかる気がする。

で、昨今のウォークカルチャーはちょっと過剰気味でもあり。そういったお笑いに対して、例えば「絶対に笑ってはいけない」を例にするなら、暴力的だという批判であるとか。たしかに公正さや差別のない世界を目指す姿勢は正しいが、完全に公正は世界はないし、それを本当に訴える相手はコメディアンや献血ポスターに対してではない。

 

賛否の多いエンディングも、トッドフィリップスの発言を思い返せば、なんとなく伝わってくる。

このごろのウォーク・カルチャーの中で、笑いを取ろうとしてみましょうよ。“もはやコメディが成立しないのはなぜか”という記事がいくつか出ていました

 

どうやってコメディ以外の方法で不謹慎なことをやろうかと考えたんです。

 

ウォークカルチャーにウケるであろう格差や差別に苦しむアーサーをひたすら徹底して描写してじつに辛い悲劇として描きつつ、最後の最後で「君にはわからないよ」と盛大に梯子を外して「The End」。これぞトッドフィリップス!不謹慎ネタここに極まり、という感じで、アーサーが一世一代、ジョーカーへの狂い咲きをするのと同様に、映画全体の指針がアーサーの行動と同じく、社会に対してのリベンジと化していて、こりゃあ問題作だと思いました。 すごく面白かったです。日本で大ヒット中というのも頷ける話。

 

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デニーロも久々に本気出してた演技だったと思いました。アイリッシュマンも楽しみです。