2018年映画ベスト10

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 

プライベートより仕事ばっかりしている時間の方が多くなっていて、あまり映画は見れず。

 

1位 ボヘミアン・ラプソディー

2位 イコライザー

3位 デッドプール2 

4位 ミッション:インポッシブル/フォールアウト

5位 デトロイト

6位 The Foreigner

7位 ザ・プレデター

8位 キングスマン:ゴールデンサークル

9位 スリービルボード

10位 検察側の罪人

 

1位は説明不要の傑作。30代の自分からすると親世代のバンドだけど、やっぱり名曲はいつまでも残っていくんだなぁと実感。ちなみに母親の同級生は、クイーンの追っかけだったそうで、ドラマーといい感じになっていたそう。高校生のときにその話を聞いたが、「フレディとはなんで仲良くならなかったの?」と聞いたら、「彼は女性に興味がないから…」と言っていて、劇中もセクシャリティに苦しむフレディの姿がありました。フレディが生きていた時代は今のようにオープンに自分のセクシャリティを言える時代でなかったから、生前黙っていたんじゃないかと思う。ある意味、この映画がフレディの苦悩を解放したようになっているところが良いんです。

 

2位は、大好物な「舐めてた相手が殺人マシンでした(ギンティ小林命名)」な映画の続編。日本公式の予告編もノリノリになっていて、「19秒」ネタや、イコライザー=凄腕の殺し屋 という意味で宣伝していて、このハッタリ具合が往年の木曜洋画劇場風で良かったです。内容も、前作ともに木曜洋画劇場か午後ローでリピートされる内容で、たまらなかったです。凄腕の殺し屋が街の皆さんの悩み事を解決していく「ザファブル」に通じるアットホーム感と、プロらしい手際の良さで悪を断つところが良いです。「今回の敵は同じ殺し屋」という触れ込みで、殺し屋の腕を悪に利用するキャラも出てきましたが、きっと現役時代のマッコールさん(デンゼルワシントン)がワンマンアーミー過ぎて、過去の仲間はそのおこぼれを預かっていただけなんだな、とも思わせる話でした。続編にも期待してます。

 

3位のデップーは、純粋に楽しい映画だった。事前にa-haのtake on me のミュージック・ビデオを見ておけと町山智浩さんが書いてましたが、まさにそれを見ておいて正解でした。見なくても楽しめるんだけど、見ておくと夢の中のヴァネッサとのシーンでジーンときます。デヴィッドリーチとデッドプールの相性は合うのかと心配してましたが、リーチ印の派手なアクションに、デップーの雪崩のようなギャグは、ぴったりでした。

 

4位は、おトムさんの頑張りがすごかったっす。シリーズの中でも、全体的にも前作のローグネイションが1番好きだけど、今作のファールアウトはハリウッドでは見たこともないような危険なアクションがひたすらあるという点で、かつてのジャッキー映画のような楽しさがありました。これからもトムクルーズのアクション映画が楽しみです。

 

5位は実話ベースのドラマで、最後は泣ける感じにして終わってますが、はっきりいってこれホラー映画ですよ。日本に例えたら、森友学園の籠池氏視点の映画みたいなもんで、急に理不尽に捕まって酷い目にあってしまうという。しかも事実では銃で脅されて、2人も殺されてしまうという恐怖。こういう映画は残していかないといけません。ただ、アメリカ旅行中の機内で見る映画ではありません笑

 

6位はジャッキーと元007が対決するポリティカルサスペンス。ジャッキー曰く「普通の人を演じたかった」とのことですが、これもイコライザーと同様に「舐めてた相手が(以下略」といったお話で。そもそもジャッキーが出てる時点で、普通にはならないと思います。とりあえず普通の中華料理店店主が娘をテロで失い、復讐に燃える、、実は店主はかつてベトナムで…といったお話。並行して、ダンディになったジェームズボンドがときおり若いチャンネーとイチャイチャしつつ、死んだ顔のジャッキーにつけ狙われ、同時に他のテロも進行中、ジャッキーはテロを防げるのか?!という、なかなか暗イイ映画となっています。ジャッキーを怒らせたらダメ、ゼッタイ!

 

7位以降は順不同。見た本数が少なかったから、もっと映画を見ていたらベストには入らなかったでしょう。スリービルボードは、世間の評価よりあんまりイマイチだった。良い映画で楽しめたんだけど、これは「ノーカントリー」の感想と似ていて、「さあ、オチはみんなで考えましょう」系の映画。いやいや、そこまで描いたんならオチも描けばいいじゃん。そういうもったいぶった感はいいよと。でもそういう映画が賞ウケするんだろうね。映画を見て考えるのはいいことだけど、考えるよりもまず楽しみで映画を見てるんであって、結末に期待した俺の気持ちはどうしてくれる?と。ノーカントリーも同じ系譜の終わり方だったけど、あれはまだオチはついてたからね。映さなかっただけで。あれぐらい突き放して終わってくれた方がまだ楽しめた。

ザ・プレデター

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プレデター(字幕版)

プレデター(字幕版)

 

 

シェーンブラック監督『ザ・プレデター』鑑賞。

 

思えばシュワルツェネッガー映画といえば俺の青春時代でもあった。一作目は100回以上見ていると言っても過言ではない。当時、母親の友人が飼っていたウサギの名前もプレデターに合わせて「ビリー」と命名したほどだった(RIPソニーランダム)。

1作目ほどの面白さはあったかと言われれば疑問だが、それでも今回の『ザ・プレデター』はかなり面白い部類に入る映画だった。

 

今作はついに登場人物が、この宇宙人に対して「プレデター」と命名したり、プレちゃんが会話していたり、シリーズ初の試みをいくつかしていると思う。

 

今作のプレちゃん(1号)の気持ちを察するとなかなかしんどいものがあり、今までは自由気ままに狩りのために地球へ来てただけなのに、今回は仲間に追われる、地球人に狙われる。「なんで僕の思いを理解してくれないんだ!」といったヤケクソ感で、哀愁漂うプレちゃんになっていたと思います(雑にアサルトライフルを撃つプレちゃんの姿が物語るように・・・)。「どいつもこいつも本当にふざけるな!(助けにきてやったのによ」とでも言いたげな暴走ぶりが良かったっす。

 

主人公のマッケナを演じたボイド・ホルブルックもなかなか役になじんでいてかっこよかった。そして各所で話題のPTSD軍人愚連隊、ルーニーズ。これが良かった。シェーンブラックといえば『リーサルウェポン』の脚本家や、いまをときめくロバートダウニージュニア(アイアンマン)の『キスキスバンバン』監督などで有名な人だけど、まさに今まで作ってきたバディムービーのやりとりを体現したような奴らがルーニーズで、1作目の『プレデター』に存在した「荒くれ者たち」の特殊部隊のようで、なかなか面白かった。

 

シリーズも長くなってきて、みんな思い思いの「プレデター像」があると思うため、賛否両論となっているが、個人的には賛に1票を入れたい。続編に続くような終わり方だったが、続編にも大いに期待したい。続編にはぜひ、ダッチを出してくれ!

 

検察側の罪人 インパール作戦

 

検察側の罪人 上 (文春文庫)

検察側の罪人 上 (文春文庫)

 

 

原作未読。原田眞人監督作品だが、原田監督の映画はあの「ガンヘッド」以来(!)の鑑賞(むしろそれしか見たことがない・・・)。

 

キムタクが「HERO」のようないつもの正義漢でなく、影のある中年敏腕検察官であり実質の悪役を演じる。対する二宮和也が、「キムタクのポチ」である若手検察官を演じる。キムタクは映画好きのあいだからは「否」の反応が多い俳優だけれど、この映画のキムタクは年相応な魅力があって、渋かったと思う。個人的にかなり良かった。二宮のおぼづかない若手演技もよかったけれど、もう二宮も35歳なんですね・・・。

 

やや雑多なエピソードが多く、もう少し交通整理してもよかったんじゃないかとも思ったり。いろいろ詰め込みすぎて、散漫気味になってしまった感はある。インパール作戦や、右傾化する政治家のエピソード、ラストのキムタク検事の扱いは原作にないものだったとか。でもなにか頭の中に引っかかる、そんな映画。自分の中でも「余計なエピソードが多かった、だから駄作」とは片付けられない、なにかがあった映画。

 

開始早々、新人検事に対して突然怒鳴り散らすキムタク検事。そこから「現在の捜査はすべて監視カメラと音声によって録音、録画されています。みなさん、発言には気を付けましょう」というつかみはオーケー。ある殺人事件の捜査が発端となり、キムタク検事の過去、そこから始まる「検察のストーリー」ありきの強引な捜査。捜査に疑問を抱く部下である二宮検事、キムタク検事を取り巻く政治家、ヤクザ。並行して明かされるキムタク検事の過去・・・。最後まで引き込まれた。

 以下ネタバレ。

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バリー・シール アメリカをハメた男

 

 

『ミッションインポッシブル:フォールアウト』も見たのですが、まずはこちらから感想を投下。

永遠のスター、おトムさんの新作。監督はオールユーニードイズキルでもおトムさんとタッグを組んだ、ダグライマン。相性バッチリの良作でした。

 

腕のある飛行機パイロットであり、麻薬の運び屋、アメリカCIAの裏工作を支援していた実在の人物、バリー・シールをおトムさん主演で映画化。本物のバリー(中年のぽっちゃりしたおじさん)と、それを演じるおトムさん(永遠のスター)は、外見が似ても似つかないが、2人の共通点は「人たらし系クズ」であるところ。常にまわりに対してナイス。みんなに頼られて仕事を安請け合いするも、あわあわしつつもきっちりこなせてしまう。すると、CIAや麻薬王からさらに信頼されて人気者に。まさにおトムさんの俳優人生そのもので、非常にハマっています。バリー・シールの仕事は、アメリカCIAの裏工作から、当時最大のカルテルであった麻薬王の運び屋、など多種多様。高度な飛行機操縦スキルで、頭角を表していきます。仕事自体はブラックですが、そつなくこなしてしまう実力と、おトムさんのハンサム笑顔で、嫌味がないのどごしのいい展開となっています。

 

とはいえ、アメリカCIAの思惑(各種裏工作などのダーティーワーク)を知るにつれ、笑顔のおトムさんと対比して悲しみを帯びたお話しとなっていきます。ちょっと幸せになりたかった男が、アメリカ政府にいいように使われてしまうところが残酷な実録ものといった感じです。ある意味、ミッションインポッシブルのイーサンハントも似たような境遇、設定ですが、あちらはスーパーモードに入ったおトムさんなので、難題をクリアするところに楽しみがあります。が、こちらは通常の一般ピーポーモードに入ったおトムさん(愛する妻と子供が一番大事)なので、「ちょっと家族にいい生活をさせたかっただけのに・・・」という、庶民的な気持ちが伝わってきます。どこかのブログや評論家の解説でも「どちらかというと、ハメられた男の話だ」「CIAに対する内部告発のような映画」と言われるのは納得です。

トムさまスマイルで、70年代~80年代の雰囲気や音楽でノリノリで進むけど、最後はちょっと悲しい、しんみりしてしまうような、そんな作品でした。アメリカCIAは決してヒーローではないし、弱者を見捨ててきた、という意味では、ある意味、裏『アルゴ』ともいえる内容でした。

 

 

夏の夢

 

以下3冊を読了。

 

日航123便あの日の記憶 天空の星たちへ

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日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る

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日航123便墜落 遺物は真相を語る

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・読むきっかけ

今年8月10日、ある夢にうなされた。夢の内容は、こんな感じだった。

<乗っている飛行機が墜落。墜落直前に目が覚める。目覚めると、普段の日常であり、夢だった模様。しかし、だれもこの墜落事故の夢を聞いてくれない(母だろうと親友であろうと)。夢の話どころか、自分のことを誰もが無視し、「なかったもの」扱いにしている。なぜだろう、と思っていると、テレビのニュースで飛行機事故のニュースが流れる。自分はその飛行機事故で亡くなっていて、ほかの人に自分の姿は見えていなかった・・・>

 

という夢だった。「夢の中の夢」ほど恐ろしいものはない。おまけに、その翌々日。テレビのニュースから「今年で日航機墜落33年となり、御巣鷹山では本日も慰霊が・・・」といったアナウンスが流れた。夢と現実の境界が崩れたような、そんな寒気がするほど恐ろしい体験だった。あの夢を見る前、なにか飛行機事故について調べていたことも一切なく、なぜあの夢を見たのかもわからない。

 

そこから、あの夢はなんだったんだろう、あの事故はなんだったんだろう、と思い、日航機墜落123便について、ネットを検索していく中でこの本を見つけた。どうも著者は事故当時、日本航空に勤めていた元スチュワーデスさんらしい。

※著者は、はてなブログも作成している模様。

tenku123.hateblo.jp

 

自分が夢を見た理由や原因はわからないが、最近私用で飛行機に乗ったこと、自分の前職は国内への飛行機出張が多かったこと、また出張時はほとんどJALだったこともあり、親近感も湧いて、手に取って読み始めてみた。

 

・感想

世の中には各種の陰謀論があり、突飛なところまでいくと「世の中を支配しているのはイルミナティフリーメーソン」など、そういった話は個人的にかなり好き。そんなことなんてあるわけない、そう思いながらも、最終的には熟読してしまう性格ではある。そんな世にあふれる陰謀論だが、この本は事実をもとに疑問を組み立て、その回答があるかないか、といった方式をとっており、「だから悪いのは●●だ」といった、断定口調になっていない。つまり、いつもの楽しく読む突飛な陰謀論とは性質が全然違う。データをもとにグラフや図、表があったり、参考文献はきっちりしてあったり、書きっぷりは学術論文のまさにそれ。それだけ真摯に書かれている。この真摯さは、最初の1冊目『日航123便あの日の記憶 天空の星たちへ』を読むと理解することができる。『日航123便あの日の記憶 天空の星たちへ』は、亡くなった同僚たちの紹介や、JALキャビンアテンダントが、どのようにして良いサービスを提供するように心がけているのかについて、詳しく書かれている。前職の出張でJALを使っていたときは、いつも「なんでこんなにいいサービスしてくれるんだろ・・・」と、JALキャビンアテンダントの対応に毎度感動していたが、この本を読むとなぜ彼女/彼らが、そういう接客をするのか、少し理解できた気がした(ついでにマイルカードもサファイアまで取りました)。海外旅行で外資航空会社(△航空)を使ったりもしましたが、サービスは当然JALのほうが上でした。デ○タのキャビンアテンダントさんも素敵だったけど・・・比較してしまうとやっぱり致し方ない部分が多く。※SMAPのようなオンリーワンを感じ取れる心がほしい。。

 

それだけプロとして仕事をやっていたことが伝わり、亡くなった犠牲者である先輩方から多くを教わり、当時の著者がキャビンアテンダントとして一人前になっていったであろうことが、本を読むとわかります。だからこそ、これだけ真摯にデータも交え、証言や記録もきっちり取って取材をしているんだろうと感じました。この本を陰謀論だと言うには、それなりに専門知識も必要とするはずです。著者の思いを察するに、この本に記載された疑惑が事実であろうが、なかろうが、真実を追求したいという強い意志を感じます(ほぼ事実ではないか、と感じ取れましたが)。すべては「なぜ、命が奪われたのか」。そこから出発しています。

 

データ、証言だけにとどまらず、本の中での取材を通じて、さまざまな疑惑だけでなく、事故当時のずさんな救助体制が見えてきます。事故当時に米軍が先に墜落機を発見するも、日本側の要請(とされる)により、救出を直前で断念したエピソード。米軍が墜落位置を知りながらも、墜落場所探しをしていた日本政府ならびに自衛隊。なにをやっているのかさっぱりわからない中曽根総理の動静。陰謀論うんぬん以前に、当時の救助体制はまったく整備されていなかったように見えます。未曽有の事故だったのは確かですが、指揮命令系統すらもぐちゃぐちゃです(何のために総理がいるのかわからない)。それについても、日本政府側からは納得のいく回答はない、という痛い事実があります。それは、事故後の事故調査委員会の調査方法や、調査報告書の結論(かなり強引に見える幕引き)も同様です。

 

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以上の動画の14秒あたりを聞くと、機長は「オールエンジン」とは言ってないですよね・・・。どう聞いても。。。「オレンジエア」でしょ。オレンジエアってなんなのといったら、そりゃもう空を飛ぶあれしかないでしょ。。。

 

ここ最近、お世話になった親戚(親戚であり親友でもある)が病気で亡くなったときも、親御さんに挨拶にいったら「亡くなった息子をこれだけ覚えてくれていることが本当にうれしい」と言われた。亡くなってしまった人にとって、本当に亡くなったのは誰からも忘れられたとき、と言うように、この事故についても「忘れないでほしい」という強いメッセージがあったのだろうか。不思議な夏の夢だった。

 

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森永卓郎はあまり好きではないが、元官僚ならではの感想でおおよそ当たってるんじゃないかとのこと。

 

 

the foreigner

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「007カジノロワイヤル」のマーティンキャンベル監督。出演は、みんな大好きジャッキーチェンと、元007のピアースブロスナン。

 

アメリカ旅行中の機内で鑑賞。日本未公開映画だが、すでにTwitter界隈の映画好きの中で公開が待ち望まれている。また、本作のジャッキーの呆然とした真顔が「月曜日のオレだ」と、各所で絶賛されている。

 

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↑月曜のオレ

 

「ハリウッドでいつも演じる、香港から来た刑事の役はもうこりごり」というジャッキーたっての思いで、今作は普通の中華料理屋のおじさん役となり、製作も兼任しているとのこと。

 

そんなわけで「普通のジャッキー」だから人間ドラマがメイン…になるわけもなく。今作は近年の流行りのマットデイモン「ボーン」シリーズ、リーアムニーソン「96時間」、デンゼルワシントンの「イコライザー」などに代表される、<舐めてた相手がじつは殺人鬼>映画のジャッキー版でした。そもそもただならぬ雰囲気を感じる「月曜のオレ」画像からも、やっぱりジャッキーが普通の中華料理店のオッさんに見えるわけない…。簡単に説明すると、かつてベトナム戦争でアメリカ政府から受託請負をしていた元特殊部隊かつゲリラのジャッキーおじさんが、ベトコン仕込みのブービートラップを駆使して、愛娘を殺したテロ実行犯を探していきます。

 

そんなわけでいつも通りのアクション映画なジャッキーですが、カンフー要素はやっぱり薄め。いろいろ技ありなアクションはありますが、こういう役は一見弱そうに見える役者が演じるからすごいんであって、かつて人類最強の名をほしいままにしたジャッキーが演じても「まだ本気をだしてないんじゃないか?」と思ってしまい。。。その代わり、テロ実行犯たちの内輪もめ、諜報部がテロを食い止められるか、といったサスペンス要素も多々あります。しかし、ジャッキーチェンという高級ホタテがいるのに、高級ホタテにソースをかけるような、どちらも美味しいんだけどそこ混ぜる?的な、印象をうけました。それ、味を打ち消しあってませんか?と。

 

ピアースブロスナンは、ひたすらジャッキーにマークされて、ベトコン仕込みのトラップ(という名の嫌がらせ)を受ける役で、当人はなにもしてないのに仲間に裏切られたり、社会的制裁を受けたり、踏んだり蹴ったりな役どころです。いい感じにおじさんになり、ボンドっぽさはだいぶ抜けてきましたね。

 

 

映画デトロイト

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アメリカで起きたアルジェモーテル事件(実話)の映画化。

 

アメリカ旅行中の機内で見たが、これほどアメリカへ行きたくない気分にさせられる映画はそうそうない(笑)そんな映画をアメリカ入国前に見るなよ、という話ではありますが…。

 

キャスリンビグロー監督の映画はハートロッカー以来。ビンラディン暗殺を描いた「ゼロダークサーティー」はあんまり食指が出ずに未見ですが、デトロイトはいい映画でした。

 

いろんな人の感想にあるように、ひたすら恐ろしい無知な白人アメリカンポリスたちの拷問、そして自分が有色人種であるがゆえの理不尽が描かれており、そこらのホラー映画より怖い話です。劇中は40年以上昔の話ですが、今の時代になっても、白人警官が丸腰の黒人を撃ち殺しても無罪放免な現実が末恐ろしい。この映画を見たら、なぜガキ使でダウンタウン浜田のブラックフェイス(お巡りさんネタで黒人の真似)が問題になったのか、少し理解できる気がします。

 

映画では序盤に黒人たちが暴動を起こし、当時ほとんど白人だった警官たちが鎮圧にあたっている描写がされています。白人警官の不安感も理解できるように描かれています。ただし、その暴動のきっかけも黒人差別に耐えに耐えかねたものだった、ということがネットで詳しく説明されています(映画はそこの説明がやや薄い)。決して暴動という「暴力」で安易に訴えていたわけではなく、暴動を起こさなければ平等を勝ち取れないほどの理不尽があった。そういう背景を見る前、見た後にでも知る必要がありそうです。

 

アメリカに行ってみて思うけど、とにかくなんでも喋って自分の意志を相手に伝える文化ですから。日本のように「相手の想いを汲んで」「遠慮して」「言わなくてもわかってくれるだろう」とか、そんなものはない文化です。そんなことしてたらずっとタコ殴りになるのがアメリカ、という印象です。だから、「平等もてめえで勝ち取れ」、というんですか。とにかく嫌なことは嫌だ、良いことは良いと言え、というところ。そうやって差別や男女不平等を減らしてきた国でもありますから。昨今のミートゥー運動もしかり。

どんなに強者にこっぴどくやられても、やられた弱者だってがっつりやり返せるのがアメリカという国ですが、やり返せないほどのひどいお話だからこそ、こうして映画化されたような気もします。この事件をきっかけに、魂を歌うソウルミュージシャンを引退した彼(ある登場人物)に対する鎮魂歌のような映画でもあり、アメリカという国の懐の大きさを感じました。ラストもそんな彼本人が歌うシーンがあり、泣かせます。

 

アメリカが舞台の恐ろしいハラスメントを描いた実話でありますが、今になって思えば日本でも共通するお話で、バカに権力と金を持たせたがゆえの某政権の忖度、某大アメフト部監督陣のパワハラが起きているように、バカに銃と警察権力を持たせてしまったがゆえのひどーいハラスメントの話が、映画デトロイトです。

「この夜を生き抜いてくれ」というセリフが劇中であるように、この映画と関係ない日本人の私も、なんとかこの社会で生き抜く必要がありそうです。