ワンスアポンアタイムインハリウッド(ネタバレなし)

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クェンティンタランティーノの新作を見る。本人曰くこれが9作目で(キルビルは1-2で1つとしてカウントする模様)、次の映画を撮ったら映画界から引退する予定なんだとか。そんな寂しいことを言わずに、マーティンスコセッシみたいに何歳になっても映画を作り続けてほしい。仮に11作目がつまらなかったとしても必ず見に行くからさ。そう思わずにはいられないぐらい、今回も素晴らしい作品でした。

 

タランティーノといえば出世作パルプフィクションが有名で、初めてパルプフィクションを見た時は「話の本筋がなんだかよくわからないんだけど、なぜかとても面白い」という感想だった。映画っていうと派手な起伏があったり、大掛かりなアクションがあったり、人を愛したり、悲劇が起きたり、何かしらの激しいドラマがあるけど、タランティーノ映画は延々とキャラクターたちが無駄話をしていることが多い(もちろん残虐なアクションシーンもあるけど)。その無駄話は、まるで古い付き合いの友人と深夜のファミレスに行って、当てもなく会話をしているような、そんな内容ばかり。そんな不毛なシーンばかりなのに、キメるところはガツんとキメてくる感じで、見た後は不思議と面白い。そして無駄話を思い出して、登場キャラクターの生き様のかっこよさに震える。

映画ってこんなゆるい感じでもいいんだ、それでも面白い映画って作れるんだ、と初めて思った監督。

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今回はタランティーノが大好きなマカロニウエスタンシャロンテイト、そしてハリウッドそのものを描く映画で、「俺は映画が大好きなんだー!」という熱い想いが、今までのタランティーノ映画史上最も伝わる。今までの映画でもそれだいぶ伝わってきたけど、今作は映画愛メーター、振り切れてました。もちろん、タランティーノのフェチである毎度恒例、女性の生足シーンもたくさんありました(笑)

ブラピが演じるクリフの腹筋シックスパックにもなかなかうっとりでした。本当、ブラピはいい年の取り方していて、いくつになってもカッコいい。さすがタイラーダーデン!デカプリオも、落ち目という設定以外、わりと素の本人に近いんじゃないかと思うようなリック(ファッキン)ダルトン様を演じていて面白かった。そんな2人が、パルプフィクションのジョントラボルタとサミュエルLジャクソンのごとく、ひたすらブロマンスな会話するところは面白かった。メソメソなデカプリオを「仕方ねーなー」と言いながら面倒みて励ますブラピ、最高過ぎです。

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あとこのザワークラウト火炎放射器シーンは要注目。見終わってからも大爆笑でしたw

 

ブルースリーも登場人物として出て、タイラーダーデンとタイマンはります。この映画を見たブルースリーの遺族は「こんな傲慢ではない」と批判しているようだが、個人的には当時世界最強の名を欲しいままにした、伝説のブルースリーですから。これぐらい傲慢でもいいんじゃない?と思った次第。傲慢な奴に描かれても、それでも名誉毀損ぐらいの酷い描かれ方ではないと思った。むしろリスペクトされた感じ。だってあのブルースリーだもんね。俺たちの偉大な師匠の1人ですから。

 

 

残忍な手法で殺害されたシャロンテイトだが、きっとタランティーノは彼女が生きていたら映画に起用したかったんだなぁ、、とも思った。かつてパムグリアをジャッキーブラウンとして主役に抜擢したように。そんな叶わぬ夢をワンスアポンアタイムインハリウッドでついに叶えた。映画愛と復讐、爽快感、そして笑いを兼ね備えた奇跡のラスト。最高でした。これだけ映画が好きなんですから、映画ファンからも愛されるわけで。だから是非、何年ブランクが空いてもいいから、気長に映画を作ってほしい。そう思わずにはいられなかったです。

 

ちなみに劇中にはリックダルトン大脱走セルジオコルブッチなどの名前も登場しており、スティーブマックイーンも登場してます。往年の映画ファン、マカロニウエスタンファンは必見。

 

セルジオコルブッチの映画、続荒野の用心棒。棺桶を引っ張るカーボーイの話だったと思う。けっこう面白かった、渋かった記憶がある。原題は映画タイトルの通り、タランティーノ第7作目ジャンゴの元ネタ映画です。

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今では名監督として有名なクリントイーストウッド。彼も昔はリックダルトンのように、イタリア製西部劇に出演し、もっとも成功した俳優として知られている。

ちなみに荒野の用心棒は、黒澤明監督の用心棒のリメイク。そして、続荒野の用心棒とは何の関連もない(邦題考えた人のいわゆる題名詐欺)。

マカロニウエスタンのなかでは、続夕陽のガンマンが一番好き。

続 夕陽のガンマン (字幕版)
 

 

ワンスアポンアタイムインハリウッド出演が決定したものの、撮影前に急逝した俳優バートレイノルズ。バートレイノルズは、リックダルトンのモデルとも言われています。とにかくアウトローだけど仲間想い、普段はグレてるけどやる時はやる。負け戦でもとりあえず挑戦する男。そんなバートレイノルズのキャラクターは、歴代タランティーノ映画のキャラクターたちともマッチします。

ロンゲスト・ヤード (字幕版)
 

 

デカプリオ演じる斜陽俳優リックダルトンと、ブラピ演じるリックダルトン専属スタントマンのクリフの関係は、パルプフィクションのトラボルタとサミュエルを彷彿とさせるが、実は北野武のキッズリターンの主人公2人のような関係も、少し思い出した。キッズリターンでは主人公2人が「もう俺たち終わったのかな」「馬鹿野郎、まだ始まってねえよ」と明るくやりとりするが、どう見ても「終わっちまった」展開しか見えない哀愁が漂う話だった。ワンスアポンアタイムインハリウッドも、これから終わってしまうのかな、と思わせる結末が少し切ない。

 

 

タランティーノ映画はヘイトフルエイトだけまだ見れていないから、今度見てみよう。

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ただタランティーノ映画が未見だったり、デカプリオとブラピにつられてあんまり映画見ない人からは不評の様子。とりあえず興味あるけど予備知識がない人は、ここで紹介した映画を事前にレンタルで見て、以下のシャロンテイト事件の概要を見ていけば、だいたい映画の内容を理解できるはずだ。

チャールズ・マンソン(女優シャロン・テート殺害事件) | 恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文 | エッセイ・ノンフィクション | 小説投稿サイトのアルファポリス

 

ワンハリとは関係のない、ある日本のドラマのラストシーン。妻を殺された主人公が犯人を捕まえた時、ひたすら犯人が殺人内容の詳細を言って挑発する。だが主人公は「お前は殺さない。お前はこれから刑務所の檻の中で、死ぬまでひたすらつまらない人生を送る。そして毎日、捕まえた俺の顔を思い出す」と言って、生け捕りで犯人を逮捕する。チャールズマンソンとその仲間の人生は、まさにこの犯人と同じだったな。

万引き家族

 

 

テレビのノーカット版で鑑賞。

あれから映画館で何を観ただろうか。なかなかブログを書こうとすると、筆が重くなってしまって、やめてしまう。仕事も忙しいし。

 

アクアマン、ゲットアウト 、この世界の片隅で、ゴジラキングオブモンスターズあたりを見たが、どれも面白かった。

特にゲットアウトは、もし劇場で見ていたらその年のベストだったほどの傑作だった。初監督のジョーダンピールはすごい。本職はコメディアンとのことで、作風もビートたけし的な二面性がある感じ。YouTubeで監督のお笑いコンビ、キーアンドピール(ザプレデターとかに出てたキーガンマイケルキーとコンビだったんですね)のコントを見たら、中学生レベルのしょうもないギャグばかりで、くだらなさに大爆笑。たけしのコマネチ!みたいなコントばっかりじゃないですか笑 映画作ったのは本当はゴースト監督なのかと思ったよ笑 映画もコントも最高だ。

Key & Peele - Sex Detective - Uncensored - YouTube

 

で、万引き家族

玄人が選ぶ映画祭で賞をもらったり、前々から評論家や見た人の感想も非常に高かった本作。だが自分の好みの問題で、なかなか邦画を見ようとする意思がなかった。つまらないんだもん、邦画。テレビでやらなかったら、見なかったでしょう。

評判とかあらすじをパッと見たり聞いたりした限り、貧困系のお話でわりと悲劇ということで、その辺りが貧困と縁のなさそうなリッチな方々、つまり映画祭で審査をするような方々にウケたのかな、と思った。実際見ても、「まあ富裕層からウケの良さそうな貧困描写してんなー」という気持ちが沸き起こり、ひねくれた見方をしてしまう自分がちょっと嫌。これが年の功ってやつです。劇中では、家族の面々がわりと良い人扱いな感じで描写されるんだけど、そこはさすがにファンタジーかなと。金がない生活ってのは、あんなに平和で幸せじゃない。現実世界に富裕層の人の横に、万引き家族に出てるような貧困家族を横に連れてきたとしたら、富裕層の人は嫌な顔をして逃げるはずだ。そして貧困層の人も汚い言葉を大声で罵っているはずだ。劇中のリリーフランキーみたいな、貧しくても人間性はステキなパパも中には居ると思うけど、かなり珍しいと思う。その辺りがファンタジーに思えてしまったのかもしれない。俺の育った近所は万引き家族みたいな人が多かったし、自分の家もわりと貧しかったから、この映画が単に貧困層を美化しているように見えたのかもしれない(大人になった私は金が全ての人間になってしまいました)。

 

とここまで散々ディスるようなことを書いてきましたが、貧困層を美化し過ぎ問題があったとしても、それでもやっぱり見終わったら心にジーンときました。特にケイトブランシェットも絶賛したと言われる安藤さくらの演技に、思わずもらい泣き。あの泣くシーンはズルいって。見てて辛かった。刑事がひたすら正論、当然警察ですから、法に則った話で取り調べを進めるんだけど、この刑事は今の自分なんじゃないか、と思ってしまった。

かつて貧困の世界が嫌で仕方がなく、とにかく金を稼ごう、こんな生活から抜け出してやると働いて、いまはそこそこの会社員になれた。会社員になったところで出世なんてしちゃないが、会社員の仕事は基本的に正論で進めることが多い。ルールを遵守しているか確認して、仕様を確認して、問題がないかテストして、整合性をとって、管理者に承認してもらって。むしろ、答えのない現実を正しい論理にどう合わせるか、みたいな仕事もあったりする。管理された組織はどこもきっちりした世界であることを求められる。そのきっちりした世界を、いろんな人に強要させるのが最近世の中になってきている。ここがこの映画の肝だったように思う。あの貧困の生活は確かに嫌だったが、今思えばゆるいなりの優しさがあった。それを人情と呼ぶのかもしれない。普段社会からしいたげられてる人は、痛みにも敏感な人が多い。だから人に優しくできるんだ。逆を言えば、エリート街道真っしぐらな人は人の痛みをまったく理解できない。それこそ正論で進めていくような人たちは特に。この映画は、後者が支配する社会で起きた悲劇を描いている告発でもある。父と子の映画としても、最近の日本のドキュメンタリーとしても傑作の映画でした。俺自身も、なるべく人に優しくできる人になりたいものです。それこそ劇中の駄菓子屋さん、柄本明みたいな人に。

 

多様性とは?

川崎の殺傷事件や、元事務次官の殺傷事件を見るに、いまの日本は相当生きづらい。

 

昔の映画を見ると、フーテンの寅さんや植木等のようなテキトーな人も許されていた世の中だったように見えるが、それがいつしか変わってしまった(そもそもフィクションの中だけで、当時も現実にそんな人がいなかった可能性もあるが)。何が生きづらいのかというと、「〜〜でなければならない」等の過度な押し付けが多いところ。「偏差値の高い学校に行かなければ」から始まり、「名の知れたいい会社に入らなければいけない」「正社員で勤めなければならない」「大人になったら結婚しなければならない」などといった、謎のあるべき論とその強制が蔓延してる。一部の偉い人たちの中だけに閉じた話ならそれでいいが、こういった押し付けがましいあるべき論がダイレクトで個人に来るように感じる。偉い人に文句言われるというか、同じ身分同士で相互監視されて、争いさせられてる感じ。もし自分が働いていなかったとしたら、「あの人は無職なのよ」と後ろ指さされるだけならともかく、人格まで否定される勢いで言われる感じ。誰がどこで働いてようが、働いてなかろうが、その人の勝手なのに。「他と違うからおかしい!」などと、大声で言われる筋合いもないし、他と違ったからといって恥を忍んでコソコソする必要もない。でも「おまえは普通じゃないんだから」といった理屈で、こういったあるべき論から外れた人、または言うこと聞かなかった人への圧力が、ここ最近ひどくなってきていると感じる。個人の自由が極端になさすぎる。正直めんどくさって感じ。リーマンショック就職氷河期を経験して「新卒カードを逃したらもうまともな就職先が無い」という、くだらない罰ゲームを体験した身からすると、こういった固定された考えは本当にくだらない。早く消え去れと思う。最近の日本は、外見だけ見れば一見多様性があるように見えるけど、その内面は新卒一括採用のみんな同じ髪型同じスーツ状態だ。

 

先の事件も、実際のところどうだったのかは想像するしかない。でも、天涯孤独で友達がおらず、結婚してなかったとしても、そんな生き方もアリなんだ認められるとか。無職期間があっても、社会復帰できる世の中とか。政治が法律がどうこうの前に、個人の判断や意志、生き方がもっと尊重される世の中になってくれと。それだけでだいぶ生きづらさや、息苦しさはなくなるんじゃないか。多様性がどうのこうの言っても、いまの日本には多様性の多の字もないから。

アメリカにいる親戚が、「アメリカは日本と比べてサービスも悪いし、物も揃ってないけど、精神的にいいんだよね。」と言ってたけど、そういうことだろうな。

自動化というけれど

最近はやりの自動化(RPA)が話題。どこを見ても自動化。凄いところだと、今まで手作業でやっていた業務を完全自動化したんだとか。エクセルにコピペする作業なんて、たしかにマクロか自動化ソフトに任せりゃいいもんね。私の仕事の周辺も、自動化の波が押し寄せているのは感じます。

 

定型的な作業は自動化して効率アップ、というのはわかるし、仕事なんて本当はしたくない自分から見たら、なんでも自動化したもらったほうがいいとは思っている。けど、どこも自動化をして何がしたい、どう良くなるの?という大きなビジョンが見えてこない。実のところ単純にコスト削減とか、ロボットが行うからミスなく品質が上がるとか、単に自動化したいとか、目先の理由が多い。

 

まだコンピュータは人が使う道具に過ぎないと思ってる。結局使うのは人。だから、コンピュータやらソフトウェアを導入したら、どんな風に人は幸せなるんだっけ?という部分を具体的に落とし込まないと、単に反発だけされる気がする。

 

推進派の人も「自動化によって仕事は無くなっても、仕事がなくなった人は、もっと創造的な仕事ができるんです」と説明するが、正直乾いた笑いしか起きない。業務を自動化に置き換えられた人は、配置転換か、はたまた転職なのかはわからないが、職を失ってから創造的なことをできると思う?ほとんどの人はムリだと思うよ。俺だって今の仕事を自動化されたとして、「創造的なことしましょう!」と言われてもムリだもん。仮にできたとしてもちょっと時間がかかるね。

 

コンピュータ業界は技術の移り変わりが早い。このまえまで新しかったことが、あっという間に古くなる。かつて電話するときは交換手もいたようだが、現代に交換手なんて存在しない。すべて電話交換機というコンピュータに置き換わった。だからきっとこの自動化の波も逆らえないんだろうね。昔から「強者の論理」で動いているのがコンピュータ業界だから。

 

いままではコンピュータ業界内部に閉じていた技術の進歩の負の部分が、コンピュータの普及にともなってさまざまな業界にも進行して、「自動化」の名の下に、地獄のような状態になっているのが現代だと思う。

 

コンピュータ関連の仕事をしている人なら経験があるかもしれないけど、コンピュータやらソフトウェアを導入して、顧客のお偉いさんからはコスト削減と喜ばれても、顧客の現場からは怒鳴られる(俺たちの仕事をなくしやがって、手作業できないから型にはまった機械的なパターンしかできない、コンピュータの素人なのにメンテナンスさせられる羽目になった、壊れた時に取り返しがつかなくなった、など)ということが、今後いろんな場面で目にするんでしょう。

 

なんの罪悪感もビジョンもなく、「自動化できやしたー」「コスト削減しやしたー」といったやり方は、後々起こりうる大きな欠陥への不注意と、人と人との怨恨を残すだけの、世知辛い商売になるんじゃないかと思う。嫌な話だ。

アリー/スター誕生

 



責務を果たし、対価を受け取る。その対価で生活を営む。すなわち社会人になってから、「小難しいことや悲劇は、仕事だけでいい」という日々が続いている。そのため、趣味の映画を見るにしても、小難しい話や悲劇に対してわざわざお金を払って見に行かないスタンスになってしまった(昔はそうでなかったんですが…)。本作は今回含め、既に4回映画化された古典・名作のリメイク。クソみたいな「余命〜年」系の邦画にありがちな恋愛映画の原点ともいえる悲しい恋愛話なので避けておりましたが、これがもう堂々たる出来で、素晴らしい映画でした。ちょっと反省してます。

 

主演を務めたレディガガ、主演兼監督のブラッドリークーパーも、期待値を大幅にオーバー。音楽界では一定の地位を築いているも、映画界では脇役に甘んじていたレディガガ。音楽界で培った確かな歌唱力と、脇役では見せきれなかったしっかりした演技で堂々の主役を張る。映画初監督のブラッドリークーパーも、選んだ題材は安いメロドラマになりかねない古典。これを、まるでイーストウッド映画のような達観した演出力で、渋い映画としてリメイク。映画の内容が新たなる才能を見いだす話であると同時に、映画自体そのものも、レディガガ(主役)とブラッドリークーパー(監督)という新たなる才能が融合し、岡本太郎(芸術は爆発だ!)のごとく、2人の才能が大爆発して、大傑作として開花しています。

 

そしてなんと言っても、アルコール依存症メンタルヘルス、男のミドルエイジクライシス(中年の危機)の恐ろしさをネチっこく描いた鬱映画でもあり、かつてイーストウッドが監督し、ブラッドリークーパーが主演した「アメリカンスナイパー」と通じるテーマです。歳をとるにつれて目減りしていく体調と才能。逃げ場のない現実から目をそらすためにアルコールに溺れる。兄役のサムエリオットが言う一見冷たい台詞、「すべての責任は彼にある」という一言で、メロドラマな悲劇から現実へとビンタで戻されます。

 

いまの自分は対価をいただいてなんとか生きてますが、いつか自分にもジャクソンのような時期が来るのだろうか、、、と思ってしまう。

単なる恋愛映画ではなく、不器用な男であれば誰もが「明日は我が身」を感じる、硬派で渋い映画です。そして渋いだけでなく、「どんなに辛くても、立ち上がって強く生きる」というアメリカの伝統的な精神が、レディガガの圧倒的な歌声として表現され、観賞後なんともいえない余韻がずっと残ります。

 

 

 

ヒロミ「40歳で小休止した僕が見つけた境地」 | ワークスタイル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

何か不祥事を起こしたわけではない。しかし、潮が引くように出演番組が終わっていく。正直、薬物事件や暴行事件を起こしたわけでもないのに、ここで一気に? と自分でも不思議に思ったし、どこか笑える部分すらあった。

それでもしがみつき、テレビの仕事を続ける選択肢もあっただろう。ただ、その先に待っていたのは、支えてくれた番組スタッフからの「ヒロミさん、つまらないから芸能界に席はないです」という最後通牒だったとも思う。僕は、求められていない感の中であがいてしがみつくよりも、自分の意志で線を引くことを選んだ。「タレント・ヒロミ」を小休止させよう、と。

これは誰にも相談せずに決めた。「俺、時代に合わなくなってきた」と感じたからだ。

おじさんと呼ばれる年齢になっての、初めての大きな挫折だった。若いうちに売れず苦労して挫折感を味わいまくる人、50歳でリストラされて途方に暮れる人。挫折と向き合うタイミングが違うだけで、誰もが一度は「きついな」という局面に対処しなくちゃいけなくなる。人生はそういうふうにできているのだと思う。

 

このヒロミのお話にも近いかもしれない。ヒロミは器用さもあって乗り越えられた人だったんですね。

 

2018年映画ベスト10

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 

プライベートより仕事ばっかりしている時間の方が多くなっていて、あまり映画は見れず。

 

1位 ボヘミアン・ラプソディー

2位 イコライザー

3位 デッドプール2 

4位 ミッション:インポッシブル/フォールアウト

5位 デトロイト

6位 The Foreigner

7位 ザ・プレデター

8位 キングスマン:ゴールデンサークル

9位 スリービルボード

10位 検察側の罪人

 

1位は説明不要の傑作。30代の自分からすると親世代のバンドだけど、やっぱり名曲はいつまでも残っていくんだなぁと実感。ちなみに母親の同級生は、クイーンの追っかけだったそうで、ドラマーといい感じになっていたそう。高校生のときにその話を聞いたが、「フレディとはなんで仲良くならなかったの?」と聞いたら、「彼は女性に興味がないから…」と言っていて、劇中もセクシャリティに苦しむフレディの姿がありました。フレディが生きていた時代は今のようにオープンに自分のセクシャリティを言える時代でなかったから、生前黙っていたんじゃないかと思う。ある意味、この映画がフレディの苦悩を解放したようになっているところが良いんです。

 

2位は、大好物な「舐めてた相手が殺人マシンでした(ギンティ小林命名)」な映画の続編。日本公式の予告編もノリノリになっていて、「19秒」ネタや、イコライザー=凄腕の殺し屋 という意味で宣伝していて、このハッタリ具合が往年の木曜洋画劇場風で良かったです。内容も、前作ともに木曜洋画劇場か午後ローでリピートされる内容で、たまらなかったです。凄腕の殺し屋が街の皆さんの悩み事を解決していく「ザファブル」に通じるアットホーム感と、プロらしい手際の良さで悪を断つところが良いです。「今回の敵は同じ殺し屋」という触れ込みで、殺し屋の腕を悪に利用するキャラも出てきましたが、きっと現役時代のマッコールさん(デンゼルワシントン)がワンマンアーミー過ぎて、過去の仲間はそのおこぼれを預かっていただけなんだな、とも思わせる話でした。続編にも期待してます。

 

3位のデップーは、純粋に楽しい映画だった。事前にa-haのtake on me のミュージック・ビデオを見ておけと町山智浩さんが書いてましたが、まさにそれを見ておいて正解でした。見なくても楽しめるんだけど、見ておくと夢の中のヴァネッサとのシーンでジーンときます。デヴィッドリーチとデッドプールの相性は合うのかと心配してましたが、リーチ印の派手なアクションに、デップーの雪崩のようなギャグは、ぴったりでした。

 

4位は、おトムさんの頑張りがすごかったっす。シリーズの中でも、全体的にも前作のローグネイションが1番好きだけど、今作のファールアウトはハリウッドでは見たこともないような危険なアクションがひたすらあるという点で、かつてのジャッキー映画のような楽しさがありました。これからもトムクルーズのアクション映画が楽しみです。

 

5位は実話ベースのドラマで、最後は泣ける感じにして終わってますが、はっきりいってこれホラー映画ですよ。日本に例えたら、森友学園の籠池氏視点の映画みたいなもんで、急に理不尽に捕まって酷い目にあってしまうという。しかも事実では銃で脅されて、2人も殺されてしまうという恐怖。こういう映画は残していかないといけません。ただ、アメリカ旅行中の機内で見る映画ではありません笑

 

6位はジャッキーと元007が対決するポリティカルサスペンス。ジャッキー曰く「普通の人を演じたかった」とのことですが、これもイコライザーと同様に「舐めてた相手が(以下略」といったお話で。そもそもジャッキーが出てる時点で、普通にはならないと思います。とりあえず普通の中華料理店店主が娘をテロで失い、復讐に燃える、、実は店主はかつてベトナムで…といったお話。並行して、ダンディになったジェームズボンドがときおり若いチャンネーとイチャイチャしつつ、死んだ顔のジャッキーにつけ狙われ、同時に他のテロも進行中、ジャッキーはテロを防げるのか?!という、なかなか暗イイ映画となっています。ジャッキーを怒らせたらダメ、ゼッタイ!

 

7位以降は順不同。見た本数が少なかったから、もっと映画を見ていたらベストには入らなかったでしょう。スリービルボードは、世間の評価よりあんまりイマイチだった。良い映画で楽しめたんだけど、これは「ノーカントリー」の感想と似ていて、「さあ、オチはみんなで考えましょう」系の映画。いやいや、そこまで描いたんならオチも描けばいいじゃん。そういうもったいぶった感はいいよと。でもそういう映画が賞ウケするんだろうね。映画を見て考えるのはいいことだけど、考えるよりもまず楽しみで映画を見てるんであって、結末に期待した俺の気持ちはどうしてくれる?と。ノーカントリーも同じ系譜の終わり方だったけど、あれはまだオチはついてたからね。映さなかっただけで。あれぐらい突き放して終わってくれた方がまだ楽しめた。

ザ・プレデター

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プレデター(字幕版)

プレデター(字幕版)

 

 

シェーンブラック監督『ザ・プレデター』鑑賞。

 

思えばシュワルツェネッガー映画といえば俺の青春時代でもあった。一作目は100回以上見ていると言っても過言ではない。当時、母親の友人が飼っていたウサギの名前もプレデターに合わせて「ビリー」と命名したほどだった(RIPソニーランダム)。

1作目ほどの面白さはあったかと言われれば疑問だが、それでも今回の『ザ・プレデター』はかなり面白い部類に入る映画だった。

 

今作はついに登場人物が、この宇宙人に対して「プレデター」と命名したり、プレちゃんが会話していたり、シリーズ初の試みをいくつかしていると思う。

 

今作のプレちゃん(1号)の気持ちを察するとなかなかしんどいものがあり、今までは自由気ままに狩りのために地球へ来てただけなのに、今回は仲間に追われる、地球人に狙われる。「なんで僕の思いを理解してくれないんだ!」といったヤケクソ感で、哀愁漂うプレちゃんになっていたと思います(雑にアサルトライフルを撃つプレちゃんの姿が物語るように・・・)。「どいつもこいつも本当にふざけるな!(助けにきてやったのによ」とでも言いたげな暴走ぶりが良かったっす。

 

主人公のマッケナを演じたボイド・ホルブルックもなかなか役になじんでいてかっこよかった。そして各所で話題のPTSD軍人愚連隊、ルーニーズ。これが良かった。シェーンブラックといえば『リーサルウェポン』の脚本家や、いまをときめくロバートダウニージュニア(アイアンマン)の『キスキスバンバン』監督などで有名な人だけど、まさに今まで作ってきたバディムービーのやりとりを体現したような奴らがルーニーズで、1作目の『プレデター』に存在した「荒くれ者たち」の特殊部隊のようで、なかなか面白かった。

 

シリーズも長くなってきて、みんな思い思いの「プレデター像」があると思うため、賛否両論となっているが、個人的には賛に1票を入れたい。続編に続くような終わり方だったが、続編にも大いに期待したい。続編にはぜひ、ダッチを出してくれ!