映画デトロイト

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アメリカで起きたアルジェモーテル事件(実話)の映画化。

 

アメリカ旅行中の機内で見たが、これほどアメリカへ行きたくない気分にさせられる映画はそうそうない(笑)そんな映画をアメリカ入国前に見るなよ、という話ではありますが…。

 

キャスリンビグロー監督の映画はハートロッカー以来。ビンラディン暗殺を描いた「ゼロダークサーティー」はあんまり食指が出ずに未見ですが、デトロイトはいい映画でした。

 

いろんな人の感想にあるように、ひたすら恐ろしい無知な白人アメリカンポリスたちの拷問、そして自分が有色人種であるがゆえの理不尽が描かれており、そこらのホラー映画より怖い話です。劇中は40年以上昔の話ですが、今の時代になっても、白人警官が丸腰の黒人を撃ち殺しても無罪放免な現実が末恐ろしい。この映画を見たら、なぜガキ使でダウンタウン浜田のブラックフェイス(お巡りさんネタで黒人の真似)が問題になったのか、少し理解できる気がします。

 

映画では序盤に黒人たちが暴動を起こし、当時ほとんど白人だった警官たちが鎮圧にあたっている描写がされています。白人警官の不安感も理解できるように描かれています。ただし、その暴動のきっかけも黒人差別に耐えに耐えかねたものだった、ということがネットで詳しく説明されています(映画はそこの説明がやや薄い)。決して暴動という「暴力」で安易に訴えていたわけではなく、暴動を起こさなければ平等を勝ち取れないほどの理不尽があった。そういう背景を見る前、見た後にでも知る必要がありそうです。

 

アメリカに行ってみて思うけど、とにかくなんでも喋って自分の意志を相手に伝える文化ですから。日本のように「相手の想いを汲んで」「遠慮して」「言わなくてもわかってくれるだろう」とか、そんなものはない文化です。そんなことしてたらずっとタコ殴りになるのがアメリカ、という印象です。だから、「平等もてめえで勝ち取れ」、というんですか。とにかく嫌なことは嫌だ、良いことは良いと言え、というところ。そうやって差別や男女不平等を減らしてきた国でもありますから。昨今のミートゥー運動もしかり。

どんなに強者にこっぴどくやられても、やられた弱者だってがっつりやり返せるのがアメリカという国ですが、やり返せないほどのひどいお話だからこそ、こうして映画化されたような気もします。この事件をきっかけに、魂を歌うソウルミュージシャンを引退した彼(ある登場人物)に対する鎮魂歌のような映画でもあり、アメリカという国の懐の大きさを感じました。ラストもそんな彼本人が歌うシーンがあり、泣かせます。

 

アメリカが舞台の恐ろしいハラスメントを描いた実話でありますが、今になって思えば日本でも共通するお話で、バカに権力と金を持たせたがゆえの某政権の忖度、某大アメフト部監督陣のパワハラが起きているように、バカに銃と警察権力を持たせてしまったがゆえのひどーいハラスメントの話が、映画デトロイトです。

「この夜を生き抜いてくれ」というセリフが劇中であるように、この映画と関係ない日本人の私も、なんとかこの社会で生き抜く必要がありそうです。