バリー・シール アメリカをハメた男

 

 

『ミッションインポッシブル:フォールアウト』も見たのですが、まずはこちらから感想を投下。

永遠のスター、おトムさんの新作。監督はオールユーニードイズキルでもおトムさんとタッグを組んだ、ダグライマン。相性バッチリの良作でした。

 

腕のある飛行機パイロットであり、麻薬の運び屋、アメリカCIAの裏工作を支援していた実在の人物、バリー・シールをおトムさん主演で映画化。本物のバリー(中年のぽっちゃりしたおじさん)と、それを演じるおトムさん(永遠のスター)は、外見が似ても似つかないが、2人の共通点は「人たらし系クズ」であるところ。常にまわりに対してナイス。みんなに頼られて仕事を安請け合いするも、あわあわしつつもきっちりこなせてしまう。すると、CIAや麻薬王からさらに信頼されて人気者に。まさにおトムさんの俳優人生そのもので、非常にハマっています。バリー・シールの仕事は、アメリカCIAの裏工作から、当時最大のカルテルであった麻薬王の運び屋、など多種多様。高度な飛行機操縦スキルで、頭角を表していきます。仕事自体はブラックですが、そつなくこなしてしまう実力と、おトムさんのハンサム笑顔で、嫌味がないのどごしのいい展開となっています。

 

とはいえ、アメリカCIAの思惑(各種裏工作などのダーティーワーク)を知るにつれ、笑顔のおトムさんと対比して悲しみを帯びたお話しとなっていきます。ちょっと幸せになりたかった男が、アメリカ政府にいいように使われてしまうところが残酷な実録ものといった感じです。ある意味、ミッションインポッシブルのイーサンハントも似たような境遇、設定ですが、あちらはスーパーモードに入ったおトムさんなので、難題をクリアするところに楽しみがあります。が、こちらは通常の一般ピーポーモードに入ったおトムさん(愛する妻と子供が一番大事)なので、「ちょっと家族にいい生活をさせたかっただけのに・・・」という、庶民的な気持ちが伝わってきます。どこかのブログや評論家の解説でも「どちらかというと、ハメられた男の話だ」「CIAに対する内部告発のような映画」と言われるのは納得です。

トムさまスマイルで、70年代~80年代の雰囲気や音楽でノリノリで進むけど、最後はちょっと悲しい、しんみりしてしまうような、そんな作品でした。アメリカCIAは決してヒーローではないし、弱者を見捨ててきた、という意味では、ある意味、裏『アルゴ』ともいえる内容でした。