万引き家族

 

 

テレビのノーカット版で鑑賞。

あれから映画館で何を観ただろうか。なかなかブログを書こうとすると、筆が重くなってしまって、やめてしまう。仕事も忙しいし。

 

アクアマン、ゲットアウト 、この世界の片隅で、ゴジラキングオブモンスターズあたりを見たが、どれも面白かった。

特にゲットアウトは、もし劇場で見ていたらその年のベストだったほどの傑作だった。初監督のジョーダンピールはすごい。本職はコメディアンとのことで、作風もビートたけし的な二面性がある感じ。YouTubeで監督のお笑いコンビ、キーアンドピール(ザプレデターとかに出てたキーガンマイケルキーとコンビだったんですね)のコントを見たら、中学生レベルのしょうもないギャグばかりで、くだらなさに大爆笑。たけしのコマネチ!みたいなコントばっかりじゃないですか笑 映画作ったのは本当はゴースト監督なのかと思ったよ笑 映画もコントも最高だ。

Key & Peele - Sex Detective - Uncensored - YouTube

 

で、万引き家族

玄人が選ぶ映画祭で賞をもらったり、前々から評論家や見た人の感想も非常に高かった本作。だが自分の好みの問題で、なかなか邦画を見ようとする意思がなかった。つまらないんだもん、邦画。テレビでやらなかったら、見なかったでしょう。

評判とかあらすじをパッと見たり聞いたりした限り、貧困系のお話でわりと悲劇ということで、その辺りが貧困と縁のなさそうなリッチな方々、つまり映画祭で審査をするような方々にウケたのかな、と思った。実際見ても、「まあ富裕層からウケの良さそうな貧困描写してんなー」という気持ちが沸き起こり、ひねくれた見方をしてしまう自分がちょっと嫌。これが年の功ってやつです。劇中では、家族の面々がわりと良い人扱いな感じで描写されるんだけど、そこはさすがにファンタジーかなと。金がない生活ってのは、あんなに平和で幸せじゃない。現実世界に富裕層の人の横に、万引き家族に出てるような貧困家族を横に連れてきたとしたら、富裕層の人は嫌な顔をして逃げるはずだ。そして貧困層の人も汚い言葉を大声で罵っているはずだ。劇中のリリーフランキーみたいな、貧しくても人間性はステキなパパも中には居ると思うけど、かなり珍しいと思う。その辺りがファンタジーに思えてしまったのかもしれない。俺の育った近所は万引き家族みたいな人が多かったし、自分の家もわりと貧しかったから、この映画が単に貧困層を美化しているように見えたのかもしれない(大人になった私は金が全ての人間になってしまいました)。

 

とここまで散々ディスるようなことを書いてきましたが、貧困層を美化し過ぎ問題があったとしても、それでもやっぱり見終わったら心にジーンときました。特にケイトブランシェットも絶賛したと言われる安藤さくらの演技に、思わずもらい泣き。あの泣くシーンはズルいって。見てて辛かった。刑事がひたすら正論、当然警察ですから、法に則った話で取り調べを進めるんだけど、この刑事は今の自分なんじゃないか、と思ってしまった。

かつて貧困の世界が嫌で仕方がなく、とにかく金を稼ごう、こんな生活から抜け出してやると働いて、いまはそこそこの会社員になれた。会社員になったところで出世なんてしちゃないが、会社員の仕事は基本的に正論で進めることが多い。ルールを遵守しているか確認して、仕様を確認して、問題がないかテストして、整合性をとって、管理者に承認してもらって。むしろ、答えのない現実を正しい論理にどう合わせるか、みたいな仕事もあったりする。管理された組織はどこもきっちりした世界であることを求められる。そのきっちりした世界を、いろんな人に強要させるのが最近世の中になってきている。ここがこの映画の肝だったように思う。あの貧困の生活は確かに嫌だったが、今思えばゆるいなりの優しさがあった。それを人情と呼ぶのかもしれない。普段社会からしいたげられてる人は、痛みにも敏感な人が多い。だから人に優しくできるんだ。逆を言えば、エリート街道真っしぐらな人は人の痛みをまったく理解できない。それこそ正論で進めていくような人たちは特に。この映画は、後者が支配する社会で起きた悲劇を描いている告発でもある。父と子の映画としても、最近の日本のドキュメンタリーとしても傑作の映画でした。俺自身も、なるべく人に優しくできる人になりたいものです。それこそ劇中の駄菓子屋さん、柄本明みたいな人に。