ワンスアポンアタイムインハリウッド(ネタバレなし)
クェンティンタランティーノの新作を見る。本人曰くこれが9作目で(キルビルは1-2で1つとしてカウントする模様)、次の映画を撮ったら映画界から引退する予定なんだとか。そんな寂しいことを言わずに、マーティンスコセッシみたいに何歳になっても映画を作り続けてほしい。仮に11作目がつまらなかったとしても必ず見に行くからさ。そう思わずにはいられないぐらい、今回も素晴らしい作品でした。
タランティーノといえば出世作のパルプフィクションが有名で、初めてパルプフィクションを見た時は「話の本筋がなんだかよくわからないんだけど、なぜかとても面白い」という感想だった。映画っていうと派手な起伏があったり、大掛かりなアクションがあったり、人を愛したり、悲劇が起きたり、何かしらの激しいドラマがあるけど、タランティーノ映画は延々とキャラクターたちが無駄話をしていることが多い(もちろん残虐なアクションシーンもあるけど)。その無駄話は、まるで古い付き合いの友人と深夜のファミレスに行って、当てもなく会話をしているような、そんな内容ばかり。そんな不毛なシーンばかりなのに、キメるところはガツんとキメてくる感じで、見た後は不思議と面白い。そして無駄話を思い出して、登場キャラクターの生き様のかっこよさに震える。
映画ってこんなゆるい感じでもいいんだ、それでも面白い映画って作れるんだ、と初めて思った監督。
今回はタランティーノが大好きなマカロニウエスタン、シャロンテイト、そしてハリウッドそのものを描く映画で、「俺は映画が大好きなんだー!」という熱い想いが、今までのタランティーノ映画史上最も伝わる。今までの映画でもそれだいぶ伝わってきたけど、今作は映画愛メーター、振り切れてました。もちろん、タランティーノのフェチである毎度恒例、女性の生足シーンもたくさんありました(笑)
ブラピが演じるクリフの腹筋シックスパックにもなかなかうっとりでした。本当、ブラピはいい年の取り方していて、いくつになってもカッコいい。さすがタイラーダーデン!デカプリオも、落ち目という設定以外、わりと素の本人に近いんじゃないかと思うようなリック(ファッキン)ダルトン様を演じていて面白かった。そんな2人が、パルプフィクションのジョントラボルタとサミュエルLジャクソンのごとく、ひたすらブロマンスな会話するところは面白かった。メソメソなデカプリオを「仕方ねーなー」と言いながら面倒みて励ますブラピ、最高過ぎです。
あとこのザワークラウト火炎放射器シーンは要注目。見終わってからも大爆笑でしたw
ブルースリーも登場人物として出て、タイラーダーデンとタイマンはります。この映画を見たブルースリーの遺族は「こんな傲慢ではない」と批判しているようだが、個人的には当時世界最強の名を欲しいままにした、伝説のブルースリーですから。これぐらい傲慢でもいいんじゃない?と思った次第。傲慢な奴に描かれても、それでも名誉毀損ぐらいの酷い描かれ方ではないと思った。むしろリスペクトされた感じ。だってあのブルースリーだもんね。俺たちの偉大な師匠の1人ですから。
残忍な手法で殺害されたシャロンテイトだが、きっとタランティーノは彼女が生きていたら映画に起用したかったんだなぁ、、とも思った。かつてパムグリアをジャッキーブラウンとして主役に抜擢したように。そんな叶わぬ夢をワンスアポンアタイムインハリウッドでついに叶えた。映画愛と復讐、爽快感、そして笑いを兼ね備えた奇跡のラスト。最高でした。これだけ映画が好きなんですから、映画ファンからも愛されるわけで。だから是非、何年ブランクが空いてもいいから、気長に映画を作ってほしい。そう思わずにはいられなかったです。
ちなみに劇中にはリックダルトン版大脱走、セルジオコルブッチなどの名前も登場しており、スティーブマックイーンも登場してます。往年の映画ファン、マカロニウエスタンファンは必見。
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セルジオコルブッチの映画、続荒野の用心棒。棺桶を引っ張るカーボーイの話だったと思う。けっこう面白かった、渋かった記憶がある。原題は映画タイトルの通り、タランティーノ第7作目ジャンゴの元ネタ映画です。
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今では名監督として有名なクリントイーストウッド。彼も昔はリックダルトンのように、イタリア製西部劇に出演し、もっとも成功した俳優として知られている。
ちなみに荒野の用心棒は、黒澤明監督の用心棒のリメイク。そして、続荒野の用心棒とは何の関連もない(邦題考えた人のいわゆる題名詐欺)。
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ワンスアポンアタイムインハリウッド出演が決定したものの、撮影前に急逝した俳優バートレイノルズ。バートレイノルズは、リックダルトンのモデルとも言われています。とにかくアウトローだけど仲間想い、普段はグレてるけどやる時はやる。負け戦でもとりあえず挑戦する男。そんなバートレイノルズのキャラクターは、歴代タランティーノ映画のキャラクターたちともマッチします。
デカプリオ演じる斜陽俳優リックダルトンと、ブラピ演じるリックダルトン専属スタントマンのクリフの関係は、パルプフィクションのトラボルタとサミュエルを彷彿とさせるが、実は北野武のキッズリターンの主人公2人のような関係も、少し思い出した。キッズリターンでは主人公2人が「もう俺たち終わったのかな」「馬鹿野郎、まだ始まってねえよ」と明るくやりとりするが、どう見ても「終わっちまった」展開しか見えない哀愁が漂う話だった。ワンスアポンアタイムインハリウッドも、これから終わってしまうのかな、と思わせる結末が少し切ない。
タランティーノ映画はヘイトフルエイトだけまだ見れていないから、今度見てみよう。
ただタランティーノ映画が未見だったり、デカプリオとブラピにつられてあんまり映画見ない人からは不評の様子。とりあえず興味あるけど予備知識がない人は、ここで紹介した映画を事前にレンタルで見て、以下のシャロンテイト事件の概要を見ていけば、だいたい映画の内容を理解できるはずだ。
チャールズ・マンソン(女優シャロン・テート殺害事件) | 恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文 | エッセイ・ノンフィクション | 小説投稿サイトのアルファポリス
ワンハリとは関係のない、ある日本のドラマのラストシーン。妻を殺された主人公が犯人を捕まえた時、ひたすら犯人が殺人内容の詳細を言って挑発する。だが主人公は「お前は殺さない。お前はこれから刑務所の檻の中で、死ぬまでひたすらつまらない人生を送る。そして毎日、捕まえた俺の顔を思い出す」と言って、生け捕りで犯人を逮捕する。チャールズマンソンとその仲間の人生は、まさにこの犯人と同じだったな。