ターミネーター:ニューフェイト
幼い頃、親が借りてきたターミネーター2を見たことで、映画好きになりました。ダビングしてもらったターミネーター2のVHSは、軽く300回以上は見ている。そんなマイ殿堂入り映画がターミネーター2です。だから思い入れもひとしお。当然、シュワルツェネッガー映画に育てられて成長しました。
ターミネーターは今回を含めて、映画はなんと6作、TVドラマは1作。マーベルユニバースは色々なキャラを出して1つのアヴェンジャーズだけど、ターミネーターはT800とコナー親子ぐらいのキャラしかいないのに、よくこんなに長く続いたものです。下手したら、各々作品のターミネーターとコナー親子を集結させて、スカイネット打倒を目指すアヴェンジャーズが作れるレベルです。
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アメリカでも日本でも、世間一般的に1と2が殿堂入り扱い。その他345に関しては自分も否定的ですが、決してつまらない映画ではないんですよ。アクションはどの続編もすべて一級品。ただ、1と2を作ったジェームズキャメロンほどの、深い掘り下げ、作り込み(作家性、と呼ばれる所)がないだけで。ギチギチに詳細設定を作り込み、本編はひたすら引き算された映画になっている「鬼才」ジェームズキャメロンですから。ジェームズキャメロンの映画アバターも、パンドラという架空の惑星、架空の言語を作ってしまった、そんな鬼才、妥協なき映画製作をする人。
エイリアンシリーズのナンバリングタイトルは、リスク承知でジェームズキャメロンのような作家性の強い監督だけを起用している特殊なシリーズだが、ターミネーターシリーズは、リスク少な目、そこそこ面白い映画を作るシリーズになっていった。
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ジェームズキャメロンのような突出した才能や作家性を持った監督を探すより、そこそこ面白く、それなりに稼げる方をターミネーターシリーズは選択したと。ただ、やっぱりファンとしてはまたジェームズキャメロン印であるとか、作家性バリバリなターミネーターを見たかった。そうこうしていたら、もう6作目になっていました。
そんなわけで、「T2の正統な続編」「今までの345は無かったことに」を謳う、今回のターミネーター。邦題ニューフェイト 、原題ダークフェイトを見ました。
実は見る前に、海外リーク情報サイトでプロットを読んだのですが…これを読んで以降、まるで劇中のサラコナー。ヤケクソ状態。「こんな映画絶対に見るかボケー」と言っていました。同居人の必死の説得で、仕方なく見に行きましたが、もう見る前から、期待半分どころの騒ぎじゃなかったです。期待値は氷点下マイナス、ストロングゼロ。「ダークフェイトは、ジェームズキャメロンが脚本と編集、製作総指揮として参画している。だから正統な続編なんだ」という触れ込みでしたが、ターミネーター5ジェニシス/新起動でのジェームズキャメロンの嘘宣伝(以下ツイート参照)にまんまと騙されたので、今回も見る前から話半分。まったく信用していませんでした。
ジェームズキャメロンって、数々の撮影中の暴君エピソードから、嘘つけない熱中しやすい天才オタクのイメージが強かったけど、これ見るとすげえ狸。この身の振り方。写真はジェニシス/新起動についてのキャメロンの感想。仁義なき戦いの山守組長で、幻滅。 pic.twitter.com/NUxVW2T3Q5
— fucktheworld (@Recovery1987) 2019年11月9日
映画がスタートして、リーク通りのある展開が開始3分ぐらいで起きて、この時点で「もうダメ、さようならターミネーター 、さようなら俺の青春」、そう思ってずっと映画を見ました………。その結果…
なにこれ、すげえ面白いんだけど!!!!!
以下見た後のツイート。
ターミネーター 新作を見る前の俺。このふてくされっぷり。見た後の今、ティムミラーととシュワに正式謝罪したい。申し訳ございませんでした!今回のターミネーターはすごく面白かった。#ターミネーター無双 #TerminatorDarkFate @Schwarzenegger pic.twitter.com/crkqXz4TV6
— fucktheworld (@Recovery1987) 2019年11月8日
アーノルドシュワルツェネッガーごめんなさい、リンダハミルトンごめんなさい、ティムミラーごめんなさい、「見たくない、行かない」とスネて困らせた同居人ごめんなさい。でもジェームズキャメロン、てめえはダメだ(理由は後述)。
何はともあれ、本作ダークフェイトは最高でした!「T2の正統な続編」の売り文句は伊達じゃない。とはいえ、見た後なにがすごかったのかいまいち言葉にできず。色々思い返してみて、ここが良かったダークフェイト。
新キャラ グレースのかっこよさ
ターミネーター12でのカイル、シュワちゃんにそれぞれ相当する守護者役がグレース。これがものすごいカッコイイ。このかっこよさはなんだろうと思ったら、カイルや守護ターミネーターだけでなく、デッドプールに近いキャラクターなんですよ。身体を痛めつけられて改造され、副作用がありながらも、強くなったその身体で一途に恩人を守り抜く。デッドプールはコメディだけど、よく見たら相当悲劇な主人公だった。グレースはまさにデッドプールと同じ。そしてターミネーターシリーズのカイルとの親和性の高さ。監督ティムミラーがもっとも得意とするキャラクターだったんですよ。だから余計にグレースが素敵に見えたのかもしれない。予言するけど、10年後、きっとグレースに憧れたと言う大人がたくさん出るはず。マッケンジーデイビスはこれからさらに人気出るね。
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怒涛のアクション
リンダハミルトンが宣伝で「前より10倍凄いアクションで、本編を見たら"なんてこった、なんてこった"と思う」と言っていたが、その言葉にウソはなかった。今までのターミネーターもキラリと光るアクションシーンが必ずあったけど、今回のダークフェイトはシリーズ最高峰と言っていい。しかも止まらない、ほぼノンストップ。まったくダレない。さすが、デッドプールのティムミラー。アクションの作りはとても上手でした。この感じ、マッドマックス怒りのデスロードの無駄のなさに近かった。
リンダハミルトンの復帰
345がグダついてたのはリンダの不在が理由なのか?と思うほど、画面に出るたびにビシッとビンタされたような緊張感。そして銃撃する姿が相変わらず似合う。本当にかっこいい。
シュワルツェネッガーの花道
本作でターミネーターを演じるのは最後と言っているシュワルツェネッガー。いつもより出番は少ないし、あくまでもそれはストーリーの一部ですが、シュワちゃん引退花道という内容でもありました。いつだって俺たちのヒーローとして映画に出ていたシュワちゃん。繊細な演技をする俳優ではなく、いまの時代ではもう珍しくなった「スター」。「背中で語る」、そういう俳優。そんなシュワちゃんの背中を見て育った世代ですから。
今作のシュワちゃんは、ターミネーターを演じつつ「一人親方の個人事業主兼主夫」を演じています(ありのままの事実です)。シュワちゃんは大人になりきれない男性ファンに、こう語りかけてるようでした。
「夫婦生活ではターミネーターのように、何があろうとミッション(家事、育児)を率先して遂行するんだ。そのミッションではターミネーターのように、疲れ知らずにやるんだ。そしてターミネーターのように"うんうん"と、棒読みでいいからずっと奥さんの話をずっと聞いてあげるんだ。そしてたまにはターミネーターのようにボケてみるんだ」
こんな事は劇中で言っていませんが、私はシュワちゃんの背中から上記メッセージを受け取りました。イクメンシュワちゃんの姿を見て、やっぱりシュワちゃんは俺たちのヒーローだと思いました。
そしてシュワちゃんといえば、なぜか西部劇っぽくなる点も健在。今までの傾向を見ても、おそらくシュワちゃん、本当は西部劇に出たかったのかな?と思ってました。ミステリー小説「そして誰もいなくなった」を映画化したサボタージュも、途中まではデビッドエアー印の麻薬犯罪サスペンスが、見終われば昔の西部劇になっていた。ラストスタンドは未見だが、より西部劇っぽいらしい。
ダークフェイトではティムミラー監督は、「勇気ある追跡(トゥルーグリット)」や「オレンジ牧場」みたいにしたかったと言う通り、かつて荒くれだった年寄りガンマンが子供を助けるストーリーを、T800ことシュワちゃんに当てはめた結果、これが見事に大成功。いまの歳をとったシュワちゃんでなければ、この哀愁は出せないですよ。
完全燃焼物語が復活
T1とT2って、独立してる一話完結の話だったと思うんです。で、そのストーリーの中でキャラクターが完全燃焼する話だった。わりとスポ根というか。キャラクターが社会的信頼を失ったり、片道切符の任務だったり、肉体的にも散々な目、危険な目に遭って、体一つ、一か八かで人生を賭けて難敵に立ち向かう。難敵はフルメタルジャケットのハートマン軍曹のように恐ろしくて、ネチネチとしつこい。そんな敵と立ち向かったあと、すべてを失うが、その後に見える、たった一筋の希望。
こんな話がまさにT1、T2だった。バッドエンドではないが、ハッピーエンドでもないこの感じが、ダークフェイトはしっかり継承してました。
運命は自分で選ぶもの
No fate, But we make.は、ターミネーター2のテーマだったが、これも復活していた。具体的には
- 虐げられた人、または決められた運命の下にある人が
- 未来からきた守護者に命を救われ
- 戦いによって自身が成長することで
- 未来を選ぶことができるようになる
男性優位の80年代初期に、シングルマザーとして自立する(せざるを得ない)ことを覚悟決める話がターミネーター1だった。ターミネーター2は定められた運命を生きていたサラとジョンが、運命を変える話だった。サラは精神病院で虐げられ、ジョンは養子に出されたことでグレていた。虐げられたことで心に傷を抱えたキャラたちが、奮発して未来を変えて自立していく。これがターミネーター12だった。これが今回のダニーとグレースの新キャラ、そしてサラとT800に対しても付与されていた。失って得るものもあり、劇中は小さな役割だが、存在を感じるジョンコナーのリーダーシップ。これはなかなか良かったです。
ダメだった点
ここだけ微ネタバレ注意。
ダメだったところはあまりないけど、これはやっぱりいただけなかった。あれだけエイリアン3に文句言ってたジェームズキャメロンさん、あなたがこれやったらあかん。世代交代で新しいキャラにしたいのもわかる。退場させたいキャラなのもわかる。だがその退場のさせ方。ティムミラーならきっと良い脚本を作ったんじゃないかなと思った。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』、あのキャラクターを殺したのはジェームズ・キャメロンのアイディアだった
ネタバレ終わり
まとめ
評価は高いけど興行収入が惨敗とのことですが、きっとこのダークフェイト、カルト映画化すると思う。ティムミラーはジェームズキャメロンと編集中に大バトルしたらしいが、それってまるでエイリアン3の時のデビッドフィンチャーなんですよ。
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ファイナルカット権が無くて、従うしかなかったところもそっくりで。それでもカットしきれない、滲み出るティムミラーの作家性。きっと大化けする監督だと思います(しなかったらちょっと悲しい)。俺としてはティムミラーで続編が見たい、素晴らしい一作でした。