2019年ベスト

早いものでもう2020年。いろいろとお世話になりました。本年もよろしくお願いします。

 

と言うわけで、2019年の映画ベスト。

順不同。

 

 

 

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ Blu-ray2枚組

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ Blu-ray2枚組

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

 

Terminator: Dark Fate

Terminator: Dark Fate

  • アーティスト:Original Soundtrack
  • 出版社/メーカー: La La Land
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: CD
 

 

「アイリッシュマン」オリジナル・サウンドトラック

「アイリッシュマン」オリジナル・サウンドトラック

 

 

 

見た映画の本数はおそろしく少ない1年だったが、これほど傑作揃いな年はなかなかないと思った。すごく良い映画ばっかりで、見るたびに感動したり、心にグッとくるものがあった。今年の印象は「哀愁」。ひたすら渋い映画が多かった。

 

アリースター誕生はレディガガの歌声と、ブラッドリークーパーのミドルエイジクライシスな鬱描写に衝撃。素晴らしい歌声に圧倒されるんだけど、イーストウッドばりの鬱展開な感じで、哀愁漂う渋い映画に。

 

ゴジラ KOMは、前作のギャレスエドワード版ゴジラが、オリジナル第1作目に準じたわりと真面目な作りで、それはそれでよかったんだけど、個人的に小さいときから馴染みがあったのは平成ゴジラシリーズ。昔は東宝系列の映画館があって、いつも仮面ライダーゴジラが上映されていた。ほぼ毎年公開されていた平成ゴジラシリーズだったが、今思い出せばわりとおバカ路線直行な内容で、当時おバカだったキッズの私も楽しんで見ていた。ゴジラ VSデストロイヤーで、一旦毎年の上映が無くなってしまったが、あれから20何年。こうして100億円以上投下してアメリカ軍の現役兵器全面協力な感じで、平成ゴジラシリーズをリブートしてくれたことはとても貴重。頭空っぽにして見てました。続編も楽しみです。

 

ワンスアポンアタイムインハリウッドは、「ザ・タランティーノ」な一作で、これで映画監督引退も囁かれる一作。引退にはふさわしい、タラちゃんが大好きなものを詰め込んだゴージャスな一作。ノレる人にはノレるが、ノレない人(具体的には60〜70年代のハリウッド映画に興味がない人)にはまったくノレない映画。そしてそれはタランティーノ映画のいつも通りなんですが…。ライムスター宇多丸だったか、町山智浩だったかがタランティーノにインタビューした話で、劇中のデカプリオの焦りは、タランティーノ本人の焦りが投影されているらしい。昔ながらの映画制作が通用しなくなってきた時代のお話で、現代のタランティーノもきっと思うところがあったんでしょう。とはいえやっぱりこれだけ本作も大ヒットさせるんですから、これからも好きなものに真っ直ぐに、面白い映画を作り続けて行ってほしい(切なる願い。

 

ジョーカーはまさかの怪作。この映画の立ち位置は1999年のファイトクラブみたいな感じ。奇しくも20年後の2019年にまたしても傑作ができた。ストーリー自体はわりとよくある話というか。そもそもの骨組みは、タクシードライバーキングオブコメディにインスパイアされたというだけあって、ありがち。それでも、世の中の社会常識や価値観を試すような、心理実験されているような、見る毒薬といってもいい映画。いろいろな解釈ができる映画でもあり、見た人によって映画の伝えたいメッセージがまったく変わる、鏡のような映画。そんな数あるテーマの中で、中核となる一つテーマは思いやりの欠如、共感の欠如、そして自己責任が蔓延した世の中を描いた話ということ。

思えば仕事でも私生活でも、「自己責任」という言葉を当たり前に聞くようになったけど、この言葉ほど為政者にとって都合いい言葉はない。そう言われたら議論も止まるし、議論するつもりのない言葉だ。これがいいなら、もう全部自己責任じゃない?という負の無限ループ、思考停止になる。そんな世の中で狂気に飲み込まれ、拳銃で暴走する男の話がジョーカー。なかなか怖い話。

 

ターミネーター ニューフェイトは、まさかのランクイン。正直、開始早々の展開とかは未だに受け入れがたいけど、それでも今まで作られたT2以降のターミネーターの中では一番面白かった。もしかしたら期待値がかなり低かったから、その反動なのかも?笑 ノンストップアクションの連続で、新キャラがかっこいいアクションしつつ、シュワちゃんとリンダハミルトンが横から渋くサポート。これがなかなか良かったっす。売れてはないけど、評価はそんなに悪くないのは納得。

 

アイリッシュマンは、スコセッシのベストアルバムとも評されていたが、見たらいやいや全然、ベストどころか完全新作じゃないっすか、という内容で。クイーンで例えるなら、イニュエンドウに近い感じ。もしかしてスコセッシのラストアルバム?みたいな趣きで。しかも今までのスコセッシ映画のイケイケ構成(ウルフオブウォールストリートのバブリーな描写を見てほしい)に比べて、ずったりずったりのんびり構成。しかしその分哀愁、渋さが全マシチョモランマ級。見た後はもうお腹いっぱいになる、見るラーメン二郎みたいな映画でした。

スコセッシはマーベル映画はシネマじゃない発言が尾を引いてますが、この人はラーメン二郎の店主みたいなもんで(⇦勝手な妄想)、最近流行の女性ウケの良い、油少なめの優しい味のラーメン屋について、「ガッツリじゃなきゃラーメン屋じゃない、ニンニク入れますか?」と言っているようなもんだと思うと、わかりやすいかもしれません(わからない)。

スコセッシは決して間違ったことは言ってないんだけど、世の中にはいろんな映画、いろんなラーメンがありますよ、という結論になりがちなニュースだったんですが、それでもやっぱり俺はマーベル映画より、スコセッシ映画、優しいラーメンよりラーメン二郎が好き。

脱線しましたが、ちゃんと順位をつけるならアイリッシュマンが1位になる出来だったと思います。スコセッシはやっぱり凄いです。見た後になんらかの傷が心のできてしまうような、そんな胸にグサッとくる映画をスコセッシは今までもよく撮ってきたわけで。

アイリッシュマンを見たあとは、「ゴジラ KOMや一部のマーベル映画みたいな、口開けてボケーっとさせられる映画もシネマだけど、これが本当のシネマなんだよ、坊や」と、スコセッシ言われたような気になりました。

アルパチーノもまさかの熱演。もう近年は「過去の遺産で食ってるんて」感ありありの省エネ演技で、定年退職後にコンビニでバイトするおじさん感覚な出来が多かったアルパチーノですが(タランティーノのワンスアポンアタイムインハリウッドにも出てましたが、いわれなきゃアルパチーノだと気がつかないステルス感でした)、本作アイリッシュマンはかつてのギラついた、俺たちが恐れたあのアルパチーノがついに復活。アルパチーノといえば主役級映画では突然名演説シーンをかますシーンがあることでも有名ですが、今回もちゃんとアルパチーノの演説ありました。

そしてなんといってもジョーペシ。半ば引退だったところを、デニーロが必死に説得して出演させたとのことですが、もう全編にわたって円熟のいぶし銀演技で、すっかり魅了されました。グッドフェローズ、カジノでの狂犬キャラブチギレ演技で名を馳せた氏ですが、今回のアイリッシュマンでは、自分で誰かを殺めたりしない「手を動かさない」ボスで、決して怒鳴ってキレないけど、もっともワル〜いやつを見事に演じてくれていて、素晴らしかったです。

 

2020年も良い映画を見ていきたいです。