デスストランディング(感想 愛でるノーマンときどきマッツ)
まず思った感想は題名のとおり。ノーマンとマッツ好きのそれぞれのファンの方が遊んだら、舐め回すような2人の映像に、興奮して発狂すると思う。
日本から生まれた天才ゲームクリエイター、小島秀夫の新作ゲーム。本人はかなりのシネフィルとしても有名。
前作メタルギアソリッド5では主人公の英語版声優がキーファーサザーランドだったが、今回のデスストランディングはさらに豪華。
声だけでなく、ついに実在の俳優そのものがフルCGとなって登場。出演は、処刑人やウォーキングデッドのノーマンリーダス、007カジノロワイヤルでボンドに金的攻撃した北欧の至宝・マッツミケルセン、同じくボンドガールを演じたりルイヴィトンの広告でもよく見るレアセドゥ、ワンスアポンアタイムインハリウッドにも出演したマーガレットクァリー、シェイプオブウォーターのギレルモデルトロ監督、ドライブのニコラスウェンディングレフン監督、そして往年の女優リンゼイワグナー。なんとも豪華なキャスティング。ここまでの人脈を集めた小島秀夫監督の実績はさすが。それだけの伝説的な人ですから。
元々コナミというゲーム会社のゲームクリエイターだったが、本当は映画監督になりたかったそう。過去作を見ても「ハリウッド映画みたいなゲーム」が多かった。ポリスノーツはSF版リーサルウェポン。スナッチャーはやったことないが、ブレランやボディスナッチャー風味らしい。
発売日にこのゲームを買ったけど、現実の核問題や軍縮、当時最先端だった遺伝子研究を背景に、プロットは「ニューヨーク1997」「ザロック」のような対テロを描いた特殊作戦もの。それらの映画と同じように、敵陣に単独潜入し、敵に見つからずに任務を遂行する。敵を倒すだけだったゲームの世界に、敵を避けるステルスアクションゲームとして、ゲーム界に革命を起こした。革新的なゲーム性だけでなく、遺伝子によって定められた運命をどう乗り越えるか、限られた人生をどう生きるかといった、自由意志に踏み込んだストーリーがあり、当時遊んだときは幼いながらに感動した。そう感じたのは日本人の俺だけでなかったようで、メタルギアソリッドは世界中で大ヒットした。軍人が見ても驚くほど、最新の軍事情報のディテールも凄かった。本物のアメリカ軍人からの支持も絶大だったらしい。
当時、俺の身近にアメリカ海軍に軍人として在籍していた人がいた。彼はかなりのゲーマーかつ、かなりのシネフィルだったが、最初は日本語版しか発売されなかったため、ストーリーをわからずもゲームだけで進めていた。その間もところどころムービーに表示される軍事用語(例えばMUF=核物質不明量」などの単語)に反応していた。これは軍に詳しい人が作ってるんだな?とよく言っていて。
その1年後、英語吹き替え版のメタルギアソリッドインテグラルが発売したので買ってあげたところ、そいつは大興奮。すごいストーリーだ!!と連日大騒ぎ。そして彼は「無線の周波数はパッケージに書いてある!」に困っていたので、もったいぶった挙句、ネタバラシをしてあげたところ大爆笑。それ以降、「This is Snake. Colnel, Can you here me?(こちらスネーク。大佐、聞こえるか?)」が彼の口癖になったのは言うまでもない。
そんなわけでメタルギアソリッドはナンバリングタイトルとして5まで作られるほど、世界的なゲームになっていった。
1はSF色がありつつもまだ現実レベルに落ち着いていたが、2はSF色の強いストーリーとなって賛否が分かれた。かくいう自分も、2のストーリーは当時一度だけで理解することが困難だった。難解なストーリーだが、インターネットが当たり前に普及し、TwitterやFacebookによって情報がコントロールされ、コントロールされた情報が選挙や思想に影響を与え、その横でAIが日常生活に浸透している現代2020年であれば、2のストーリーは理解しやすいと思う。それぐらい先取りしたストーリーだった。おそらくインターネットが発達してきた2001年当時から、小島秀夫は現代のヴィジョンが見えていたのだと思う。
流石に4-5あたりからはSF設定が行きすぎて超能力レベルになってしまい、ストーリーに現実味が無くなってしまったが、現実味を楽しむというより、小島秀夫のメッセージ性が強いテーマ重視のゲームに変化していった。ちなみに3は1960年代を舞台、5は1980年代を舞台にしていて、それぞれが前日譚となっていた。
そしてメタルギアソリッド5のあと、小島秀夫が次作として、映画化もされた有名ホラーゲーム、サイレントヒルの新作ゲーム製作が発表された。
ギレルモデルトロが共同製作。主演はノーマンリーダス。体験版も配信されていたが、ここで有名なコナミ経営層と小島秀夫の間での確執、トラブルが起きた。このトラブルによって、サイレントヒルの新作企画は潰えた。メタルギアソリッドの続編も永久に中止され、小島秀夫はコナミを退社。ファンにとっては悲しい出来事だった。
しかし小島秀夫はそんな逆境を跳ね除け、心機一転で会社を立ち上げた。そしてソニーの出資、ギレルモデルトロの支援もあり、本作デスストランディングを豪華キャストで完成させた。このエピソードはネットでよく見かけるので、そちらを参照願いたい。これも小島秀夫の作るストーリー並みに感動する。それだけで一本の映画にできるほどの泣けるストーリーだが、実際のゲーム、デスストランディングもこの実話が反映されたような素晴らしいゲームだった。
初めてすぐに安部公房の「縄と棒」の一節が出る。ストーリーの中でも、人は手を握れば相手を拒絶(棒)、手を開けば誰かと繋がること(縄)ができる、という説明があるとおり、そういう世界観のゲーム内容になっていた。小島秀夫はコナミを退社したとき、何もないところから独立となったが、今までメタルギアファンだった少年たちが大人になったり、出世したファンの人たちが彼の独立を支援してくれたそう。今回のデスストは、そんな小島秀夫の体験を追体験できるような、人との繋がり=ストランドゲームとなっていた。
ゲーム性としても、今までは軍事系アクションゲームだったが、今回はまさかのお使いゲー笑。なんせ主人公は配達人。言ってしまえば、世界の命運を握る荷物を運ぶ、ヤマト運輸や佐川急便みたいな話。でもこれがなぜか面白い。オンライン対応ゲームだが、不特定の誰かと一緒に遊ぶのとちょっと違う。ネット上の不特定のみんなも同じ主人公を操作していて、プレイヤーの数だけ、同じ主人公の多次元が存在するような世界になっている。で、他のプレイヤーが辿った足跡や、置いたアイテムがあり、それを活用することで難所を乗り越える。そういう近からず遠からずな繋がりを持てる。これがとても良かった。で、誰かのそういったアイテムに、Facebookのごとくいいね!もできる。 クリアしても遊び続けたいのは、俺が託したアイテムや、自分のために使ったアイテムが、誰かが使って、その誰かを助けることになるから。この善意の繰り返しが、すごく心地よい。荷物を配達するだけなのに笑
今までメタルギアソリッドだけだったので、完全新作はストーリーもとても新鮮。説明することが難しいが、ゾンビ映画のようなデストピアな世界観に、心霊体験と三途の川といった、日本的宗教観を混ぜて、さまざまなSF映画をブレンドした感じ。クリアした今でもまだ完全には理解しきれていない。ややセリフでなんでも説明しすぎるきらいはあるが、それでも父と子というパーソナルな話にオチを持ってくる手腕に脱帽、そして感動。
ぜひぜひ、一度は体験してほしい圧巻のストーリーです。