パラサイト 半地下の家族

 

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: Prime Video
 

 

これは面白い。アカデミー賞取ったのも納得。
アカデミー賞授賞式では監督のポンジュノがマーティンスコセッシに謝辞を述べていたけど、まさにマーティンスコセッシの映画だとか、ホアキンフェニックスのジョーカー、是枝監督の映画のようなダークなお話。だけどポンジュノの作風なのか、どこかオフビートで笑える。この暗い話なのにおもわず笑える点が、ポンジュノらしさな気がした。ポンジュノ作品そんなに見てないけど、1番ダレるところがないというか、溜めが少なく、テンポが良い。

 

最初は「アカデミー賞受賞!カンヌ映画祭受賞!」と聞いていたので、お高いというか、高尚な難しい映画なのかと思って敬遠してたけど、途中でミッションインポッシブルに匹敵するステルスアクションシーンがあり、そこに夫婦の営みをブッ混むという、高度な離れ技もあり大爆笑。時計回りで〜、はヤバい。あのお姉さんが公開後の韓国で「時計回りお姉さん」というあだ名がついてしまったらしく、それを知ってさらに爆笑。

 

主人公の父を演じたソンガンホも、相変わらず素晴らしい。タクシー運転手…とは別人のような演技もいいっす。主人公である父は、今までのソンガンホ映画と同様に、けっこうなダメ人間キャラなんだけど、そんなダメな父にも敬語でしっかり敬って話す息子の姿を見て、この映画は家父長制で有名な韓国のお話なんだなーと感じた。友人に韓国の人がいるが、やっぱりお父さんには絶対服従な感じ。

 

この映画は南青山や六本木に住むような、成金であるとか、大金持ちの連中を「単なるバカ」として徹底して描いている映画でもあり、ブラックな笑いに包まれる2時間であった。韓国映画だからといって対岸の火事ではない、日本にもこういう成金いるよね、というお話。良い例だと、南青山で児童相談所建設に反対していた頭の悪そうな成金連中たち。こういう人たちが「金はあるけど能(脳)がない人」として描かれる。

でもポンジュノ監督が流石なのは、登場する大金持ちたちを、悪意を込めていないところ。大金持ちたちを「単なるバカ」として冷徹に描いているが、同時に悪意のない、というか悪気のない純粋無垢なバカ、として描いている。でも彼らに悪気がないからこそ、ラストは彼らへの怒りが余計に際立つわけで…。

その他に、「計画はある、無計画だ」のセリフがとても印象に残った。学習性無力感ってまさにこれ。絶望しかないんだけど生きるしかない時って本当にあんな感じ。笑える映画なんだけど、ところどころでこういう激鬱な部分をチラッと見せてくる映画です。

 

実際のところ、映画を撮ったポンジュノも俳優たちはまだしも、この映画をアカデミー賞に選んだ人たち、受賞時にイエーとポンジュノと集合写真撮ってたハリウッドの連中なんかについては、根っからの大金持ちか成金。つまり劇中での豪邸側の住人なわけで。そういう部分がまた見た後にイヤーな気持ちに感じさせる。虚構と現実の二重構造で、グロテスクかつ皮肉なお話でもある(お金持ちの涙腺に触れたから賞を取れたのか?という、意地悪な見方…)。

ジョーカーやタクシードライバーに共感する人は超おすすめ。笑えるシーン多めなので、見終わってもすぐには気がつかないけど、それらの映画よりも実は悲惨なラストでもあります。

おすすめ。